一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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種子の発芽に空気が必要な理由

質問者:   大学生   焼き芋
登録番号4983   登録日:2021-02-09
質問のタイトル通りですが、種子の発芽に空気が必要な理由を教えていただきたいです。大学生にもなって分からないというのも恥ずかしい限りですが、小中高で習った発芽の三要素に疑問を覚えました。調べたところ、水や温度の必要性はよく分かりましたが、空気(酸素や二酸化炭素など)が種子に対してどのような作用が働くのかについては、納得のいく答えを見出すことができませんでした。生物にとって空気は必要不可欠です。当たり前のように、空気は植物にも必要であると思っていましたが、その理由を深く知りたいと思い質問させていただきました。よろしくお願いいたします。
焼き芋 様

この質問コーナーをご利用いただきありがとうございます。
「発芽」とは、典型的には、休眠状態にある乾燥種子が吸水によってもともと備わっていた代謝活性を回復し、それに続く胚軸と幼根の伸長を始める過程であると理解されています。当然、細胞の秩序が回復して代謝過程が進行するためにはエネルギーが必要で、①貯蔵物質の無酸素的な分解(発酵)、②貯蔵物質の酸素呼吸による分解、③光合成の三者の何れかの過程(またはそれらの組み合わせ)によってエネルギーが調達されるものと考えられます。もちろん、②の場合にはミトコンドリア、③に場合には葉緑体が機能状態になっていることが必要で、それぞれの場合に、大気の成分である「酸素」または「二酸化炭素」の供給が不可欠となります。

種子発芽の過程は植物の種類によって多様で、酸素の存在を嫌う「嫌気性発芽」のような場合や光の刺激を必要とする「光発芽」のような場合もありますが、多くの植物に共通して無酸素状態では発芽の進行が遅れる事実がありますので、初期の段階では主に呼吸によってエネルギーが調達されているものと見受けられます。このため、発芽の要素の一つとして「空気(酸素)」が挙げられる(ことがある)のだと思います。

なお、生物の中には空気(酸素)の存在を嫌うものもあり、絶対(偏性)嫌気性細菌の場合には大気レベルの空気の存在下では死滅してしまいます。
佐藤 公行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2021-02-10
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