質問者:
自営業
ひぐらし
登録番号4986
登録日:2021-02-11
釧路湿原の近くに住んでいます。最近、ヨシの葉は稈を中心にして回転することを知りました。また、ヨシを観察すると同一個体や周辺のヨシの葉が同じ方向にそろっていることに気が付きました。これは葉が風を受けてそろうのか、より日光の当たる方向に対してそろおうとするのかどちらかと推測しています。また、それら両方を含むのかもしれないとも思っていますが、このことについて何か分かっていることはありますか?
みんなのひろば
ヨシの葉の回転について
ひぐらし さん
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
ヨシの葉が「稈を中心にして回転する」と表現されておられるのは「葉の基部が捻れて葉面の向きが変わる」ことを指しておられることと思います。古くから知られている現象で「光の弱いときに葉が光の来る方向に垂直になるように向き、光の強いときには光の方向と平行になるように動いて光合成器官である葉が受光量を調節する」現象で調位運動(Heliotropism)といいます。マメ科をはじめ多くの植物種において知られています。植物はこの他、茎、根を曲げる屈曲運動、主軸先端部を旋回させる回旋運動(転頭運動、つる植物や巻きひげ)、葉や花弁の開閉運動などさまざまな動きをします。すでに1880年にはCharles Darwinが自身の観察結果をまとめた書 ”The Power of Movement in Plants” を著しています。運動の引き金に相当する刺激には、光(方向、明暗、照度、質-波長-)、温度変化、湿度変化、重力方向変化、接触などたくさんの環境変化や体内時計に支配される運動があります。
ご質問のヨシ(単子葉類、イネ科、ヨシ属Phragmites)については残念ながら葉の調位運動についての記載を見つけることが出来ませんでした。しかし、単子葉類が動きを示さないのでなく、バショウに近いヤバネバショウ属のカラテア(Calathea)やクズウコン属のマランタ(Maranta)(ともに日本在来種ではありませんが観葉植物として園芸店で市販されています)の葉は照度の低いとき(早朝や薄暮)では開いていますが、昼頃の日照の強いときは葉の表を内側にして巻いて(裏側を外にして筒状に巻く)強光の害を避ける調位運動をします。
イネの葉は調位運動とは違い、上位の葉は縦にたち、下位の葉は上位の葉の陰にならないように成長とともに茎との角度を増す運動をしています。さらにこのイネ葉の運動には体内時計(概日リズム)に支配される部分(一般に植物の癖のようなものです)もあることが明らかにされています。
典型的な葉の調位運動はダイズ、クズなどのマメ科で見られます。ともに3出小葉(頂小葉と左右の小葉)からなる複葉ですが、朝、夕には、左右の小葉が光の来る方向に葉の表面を向けます(葉面が光方向に垂直)。昼頃太陽光が強くなると過剰の光を受けないように各小葉は光と並行するように小葉身を立てて受ける光の量を調節します。
調位運動とは別に就眠運動(Nyctinasty)があります。カタバミ、コミカンソウをはじめ、オジギソウ、ニセアカシア、ギンネムなど多くのマメ科の葉(羽状複葉、小葉が多数)やチューリップ、マツバボタンなどの花弁は夜になると閉じ、明るくなると開く運動を繰り返します。
このように葉や茎の運動は非常に多くの植物で知られており、重要な課題でもあります。このコーナーでもかなりのご質問が来ておりますので、「開閉運動」、「就眠運動」、「成長運動」などで検索されて参考になされば、植物の運動の概要がつかめると思います。
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
ヨシの葉が「稈を中心にして回転する」と表現されておられるのは「葉の基部が捻れて葉面の向きが変わる」ことを指しておられることと思います。古くから知られている現象で「光の弱いときに葉が光の来る方向に垂直になるように向き、光の強いときには光の方向と平行になるように動いて光合成器官である葉が受光量を調節する」現象で調位運動(Heliotropism)といいます。マメ科をはじめ多くの植物種において知られています。植物はこの他、茎、根を曲げる屈曲運動、主軸先端部を旋回させる回旋運動(転頭運動、つる植物や巻きひげ)、葉や花弁の開閉運動などさまざまな動きをします。すでに1880年にはCharles Darwinが自身の観察結果をまとめた書 ”The Power of Movement in Plants” を著しています。運動の引き金に相当する刺激には、光(方向、明暗、照度、質-波長-)、温度変化、湿度変化、重力方向変化、接触などたくさんの環境変化や体内時計に支配される運動があります。
ご質問のヨシ(単子葉類、イネ科、ヨシ属Phragmites)については残念ながら葉の調位運動についての記載を見つけることが出来ませんでした。しかし、単子葉類が動きを示さないのでなく、バショウに近いヤバネバショウ属のカラテア(Calathea)やクズウコン属のマランタ(Maranta)(ともに日本在来種ではありませんが観葉植物として園芸店で市販されています)の葉は照度の低いとき(早朝や薄暮)では開いていますが、昼頃の日照の強いときは葉の表を内側にして巻いて(裏側を外にして筒状に巻く)強光の害を避ける調位運動をします。
イネの葉は調位運動とは違い、上位の葉は縦にたち、下位の葉は上位の葉の陰にならないように成長とともに茎との角度を増す運動をしています。さらにこのイネ葉の運動には体内時計(概日リズム)に支配される部分(一般に植物の癖のようなものです)もあることが明らかにされています。
典型的な葉の調位運動はダイズ、クズなどのマメ科で見られます。ともに3出小葉(頂小葉と左右の小葉)からなる複葉ですが、朝、夕には、左右の小葉が光の来る方向に葉の表面を向けます(葉面が光方向に垂直)。昼頃太陽光が強くなると過剰の光を受けないように各小葉は光と並行するように小葉身を立てて受ける光の量を調節します。
調位運動とは別に就眠運動(Nyctinasty)があります。カタバミ、コミカンソウをはじめ、オジギソウ、ニセアカシア、ギンネムなど多くのマメ科の葉(羽状複葉、小葉が多数)やチューリップ、マツバボタンなどの花弁は夜になると閉じ、明るくなると開く運動を繰り返します。
このように葉や茎の運動は非常に多くの植物で知られており、重要な課題でもあります。このコーナーでもかなりのご質問が来ておりますので、「開閉運動」、「就眠運動」、「成長運動」などで検索されて参考になされば、植物の運動の概要がつかめると思います。
今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2021-03-02