一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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発芽後の種皮について

質問者:   会社員   はる
登録番号5008   登録日:2021-03-04
最近植物の発芽の様子を映した映像を見る機会があり、ふと気になったことがあります。

映像で見た発芽はトウモロコシのものでしたが、根のところに種皮が残っていました。この種皮はこの後どうなるのでしょうか?
土の中に残って、いずれ微生物などに分解されるのでしょうか?
あるいは成長過程で植物に吸収されたりするのでしょうか?

はる様

みんなのひろば植物Q&Aへようこそ。質問を歓迎します
植物種子の発芽や発芽中の環境ストレス(洪水、干ばつ等)耐性の研究をされている深尾武司博士(福井県立大学生物資源学部准教授)に回答をお願いしました。

【深尾先生の回答】
植物種子の種皮は、病原菌から身を守ったり休眠を維持するなどの機能があるのですが、発芽後に離脱した種皮の役割については、詳しく研究されていません。土壌中の種皮は、微生物、原生生物、ミミズなどによって分解され、その一部は植物に吸収されることもあると思いますが、土壌中にある栄養素全体からみて種皮の分解から得る栄養素は少ないので、植物全体の成長を大きく左右するほどの栄養はもたらさないでしょう。これが結論です。
植物がいらなくなった器官でも、たとえば落葉などは分量がかなり大きいので、それらが分解者によって分解されると近隣の植物の成長に影響を与えるほどの栄養になり ます。
 脱落した植物組織の分解速度は、その地域の温度や湿度により大きく異なります。熱帯雨林のような高温多湿の場所では分解者の密度が高く活発に働くため分解が早いですが、寒冷な針葉樹林帯では分解が遅いため有機物がいつまでも分解されずに堆積しています。日本のような温帯域では、その中間の速度で分解されます。いずれにしても、分解された植物組織は最終的に無機物となり、近隣の植物によって養分として吸収・利用されます。
深尾 武司(福井県立大学生物資源学部准教授)
JSPPサイエンスアドバイザー
櫻井 英博
回答日:2021-03-11