一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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サボテンと土壌のpHについて

質問者:   会社員   山口
登録番号5015   登録日:2021-03-09
サボテンは石灰質土壌の地域に自生しているためアルカリ土壌を好むと言われており、そう思っていました。
しかし、サボテン愛好家の方とお話しした際に、アルカリ性の土(ハーブの土)で育てると元気がなくなるので、弱酸性土壌で育てたほうが良いと聞きました。
市販のサボテンの土を調べてみると、たしかにpHは弱酸性(pH5〜7、6.0程度、6.5)でした。

サボテン用の土として売られているものが弱酸性ということは、サボテンを育てるにはアルカリ性の土壌は適していないということなのでしょうか?
それとも、なんらかの理由で、日本では弱酸性土壌で育てるようになっているだけなのでしょうか?
山口さん

みんなのひろば、植物Q&Aへようこそ。質問を歓迎します。
回答は香川大学農学部教授で花き園芸学の研究をされている深井誠一博士(農学)にお願いしました。
質問に記載された一サボテン愛好家の意見よりも広い視野からの本回答が役立つことと思います。

【深井先生の回答】
「サボテンは石灰質土壌の地域に生息しているためアルカリ土壌を好むのではないか」というご質問ですが、まずサボテンとは北はカナダ北部から南はチリーの南部までの南北両アメリカ大陸およびインド洋の一部まで地球上の広範囲に自生し、約2000種が含まれる大きなファミリー(サボテン科)に属する植物の総称です。確かに石灰質土壌地帯に自生しているサボテンは多数ありますが、必ずしもサボテン全てがアルカリ性土壌に生育しているわけではありません。また石灰質土壌に生息している植物が、生育するためにアルカリ性土壌を必須としているわけではなく、むしろアルカリ性土壌に若干の耐性があるというものが多数です(これについては、みんなのひろば 「石灰岩」で検索し、登録番号0230を参照)。一般的に多くの植物は弱酸性の土壌が生育に適しており、サボテンも例外ではありません。pHの高い培養土でサボテンを栽培すると、ホウ素やマンガンなどの不可吸化が起こる可能性があります。pHの高い水道水が供給されている国では、サボテン栽培者の間では水に酢を加えて酸性水をサボテンに与えることが推奨されているくらいです.確かに古いサボテンの栽培書の多くで、「サボテンは石灰質土壌の地域に生息しているのだから培養土をアルカリ性に調整する必要がある」と述べられているのは事実ですが、現在はそのような誤った記述はほぼありません。園芸店等で売られているサボテン用培養土は、排水性と保水性を考慮したいくつかの用土が組み合わされています。具体的には、赤玉土、鹿沼土、パーライト、軽石、バーク堆肥や固形有機質肥料などが用いられた混合培養土で、全体として弱酸性になっており、これは理にかなったものと言えます。
以上
櫻井 英博(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2021-04-23
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