一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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トチノミのサポニン、アクヌキについて

質問者:   一般   なお
登録番号5038   登録日:2021-04-04
昨年末に、山間部の知り合いかがトチモチを送ってくださって、とても美味しく頂きました。丁寧に灰汁抜きしたトチモチの風味は、トチの苦みというよりも、灰汁の辛みということで、興味が出てきました。
こちらの過去の質問でもトチノミのアクヌキについて、ご回答がありましたが、まだよくわからないことがあります。

一般に水溶性であるサポニンが、トチノミでは非水溶性であるとのこと。非水溶性なのに、どうして、水さらしや、アルカリ処理だけで、サポニンが除去できるのでしょうか。それとも完全に非水溶性ではないのでしょうか。
それとも、灰の中にタンニンがあって、サポニンを収斂させて流してしまうのでしょうか。

ご回答をどうぞよろしくお願い致します。
なお さん

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
「過去の質問でもトチノミのアクヌキについて」と指摘されているのは登録番号1612(トチノミのアク抜きについて)のことと推察しました。確かに、質問の中には「考古学の世界では、トチノミには、タンニン以外に非水溶性のサポニンやアロインが含まれるために、灰水を使用しないとアク抜きができないとされてきました。」との記載がありますが、回答では考古学とあく抜き法については「判らない」こととしてその真偽については触れていません。登録番号1612の回答では「サポニンが、トチノミでは非水溶性であるとのこと」との記載はいたしておりませんし、水溶性物質であるが、植物組織のあく抜きにはいろいろ考慮しなければならないことを説明しています。再度、回答を読み返して頂ければ今回のご質問への回答となっていることをご理解頂けると思います。

考古学、民俗学とトチの実についてちょっと調べてみました。以下のサイトは学問的な記載ですのでご参考になると思います。
特に(1)のIII, IV, V節を見ますと登録番号1612の質問の前段の記載は何かの間違いではないかと思われます。
(1)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nihonkokogaku1994/13/22/13_22_71/_pdf/-char/ja
(2)
https://www.kaf.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2012/02/H212youkososiryou.pdf

追加説明になるかも知れませんが、サポニンはトリテルペノイドの配糖体の総称で、非常に多くの植物種に含まれています。糖としては複数種の糖が結合しています。その結果、アグリコンであるトリテルペノイド(サポニンの種類によって構造は違います)はほぼ非水溶性ですが、親水性の高い糖が結合した配糖体になると水溶性となります。分子としては非水溶性(親油性)部分と親水性部分とから構成されていますので石けんと類似の構成となっています。そのため水溶液には高い気泡性(泡立ちやすさ)があります。マメ科のサイカチは大きなナタマメのような果実を実らせますが、その鞘は多量のサポニンを含み、昭和の初期くらいまで民間で石けんの代用としていたことがあるくらいです。
今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2021-04-27
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