一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ニホンタンポポとセイヨウタンポポの交雑について

質問者:   高校生   ゆうた
登録番号5040   登録日:2021-04-06
ニホンタンポポとセイヨウタンポポが交雑しているということを聞きました。
セイヨウタンポポの花粉がニホンタンポポに付き受粉して雑種ができているとネットで調べ、出てきました。
しかし、ニホンタンポポは二倍体でセイヨウタンポポは三倍体でそもそも生殖機能を失うはずの三倍体の生物が花粉をなぜ持っているのか疑問に思います。例えば三倍体のスイカでは白い機能しない種ができると聞きます。では、なぜ三倍体のセイヨウタンポポでは機能する花粉ができるのでしょうか?
ゆうた さん

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
在来種のタンポポにはニホンタンポポと総称されるカンサイタンポポ、トウカイタンポポ、カントウタンポポなどは2倍体で、減数分裂が正常に行われますので雌しべ、雄しべでつくられる、卵子と精核の接合で次世代種子を形成します。しかし、ニホンタンポポは自家不和合成ですから、雌しべの柱頭は、別の個体の花粉を受粉することが必要です。
一方、外来種であるセイヨウタンポポは3倍体と言われてはいますが、実際には3倍体以上の奇数倍数体も混在しています。そしてその大部分がアロザイム分析(特定の酵素の電気的状態の違い(多型性)を指標として違った個体間の遺伝的関係を解析する方法)や遺伝子解析(特にミトコンドリアの遺伝子の)などからニホンタンポポを雌親としたセイヨウタンポポとの雑種が出来ていると推定されてきました。奇数倍数体であるセイヨウタンポポに受精能のある花粉が形成されるかが問題ですが、実際には花粉が形成されそれをニホンタンポポの柱頭に受粉させると雑種が形成されることが観察されています。どのようにして花粉が形成されるかについて3倍体では異常な減数分裂が起こり、染色体数が単相(x)の精核ではなく、複相(2xや3x)の精核をもつ花粉が出来ることが推定されています。これらの花粉がニホンタンポポの柱頭につき、接合が行われると次の様な組み合わせの雑種が出来ます。細胞質はすべて
ニホン型ですが、核はニホン型x+セイヨウ型2xの3倍体、ニホン型x+とセイヨウ型3xの4倍体、セイヨウ型3xの雄性単為生殖の3倍体と言った雑種ができることになります。富山大学の研究者たちの調査では、大学構内のセイヨウタンポポは3、4、5、・・・・倍体の多数倍体が出来ていることが確認されています。
なお、このコーナーの登録番号0518, 1224, 4786, 4974は理解を深めるために是非ご参照下さい。
今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2021-05-03
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