一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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「ヤマアイの雌雄は光が決める」の判断に関して

質問者:   その他   PAPYRUS
登録番号5042   登録日:2021-04-10
定年退職後に趣味で植物の観察を続けております。
過去に何度か質問させて頂き、丁寧な回答を頂きましたこと感謝申し上げます。
さて、先月小石川植物園で行った観察で、「ヤマアイの雌雄は光が決める」の
結論を得てブルグ記事にまとめました。光がヤマアイの雌雄を決めるは既知の事実でしょうか。
他の植物で、光が植物の性決定に関わる研究などがあればご教示下さい。
更に、今回私が行った観察方法と論理の組み立てにミスや齟齬があれば、ご指摘を頂きたく
お願い申し上げます。宜しくお願い申し上げます。
私のブログ記事
「ヤマアイの雌雄は光が決める」http://ashikawapapyrus.livedoor.blog/archives/9651439.html
「ヤマアイの雌雄比調査 光が性を決める可能性」
http://ashikawapapyrus.livedoor.blog/archives/9615857.html
「ヤマアイの両性株と光環境」
http://ashikawapapyrus.livedoor.blog/archives/9569549.html

PAPYRUS様

植物Q&Aのコーナーを利用下さりありがとうございます。回答は植物の雌雄性にお詳しい松永幸大先生にお願い致しました。光による性変化の論文もご紹介いただきました。

なお、古い本ですが、岩波全書に「植物の雌雄性」(小野知夫著)という本があります。その中に光と雌雄性に関する記載があります。参考になるかもしれません。


【松永先生の回答】
PAPYRUS様
興味深い研究を紹介していただき、どうも有難うございました。
ヤマアイ(Mercurialis leiocarpa)の雌雄性の研究論文を探しましたが、見つけることができませんでした。
ヤマアイの属しているMercurialis属には雌雄異株が多いため、他の近縁種で雌雄性の研究をした論文は発表されていましたが、光にに注目した論文はありませんでした。従いまして、PAPYRUS様が提唱している「ヤマアイの雌雄性は光が決める」とする説は、既知の事実ではないと思われます。植物の光要因を考える場合、日長が重要になります。
日長によって性表現が変化する植物として、クワ、ヘチマ、ヒノキなどが知られています。PAPYRUS様の作業仮説は異なる群落で同様の傾向を示していることから、検証する価値は十分にあると思います。
具体的には、同時に播種したヤマアイを日長条件だけ変化させた環境で生育させて、雌雄性を調査することで検証できると思います。日長に応じて雌雄性が変化することを示すことができれば、作業仮説は正しいと思います。
以上です。以下の論文を参考にしてください。

ヒノキ(ヒノキの花成反応に及ぼす光処理の効果)
https://www.ffpri.affrc.go.jp/labs/kanko/332-4.html

ヘチマ(ウリ類の花の性表現における日長反応-Luffa属及びLagenaria属植物について)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjshs1925/55/3/55_3_303/_article/-char/ja

クワ(桑の性表現に及ぼす日長処理の影響)
https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010203659
松永 幸大(東京大学大学院 新領域創成科学研究科)
JSPPサイエンスアドバイザー
庄野 邦彦
回答日:2021-05-10