一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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竹の若葉が黄色い理由は?

質問者:   教員   もの好きジジイ
登録番号5046   登録日:2021-04-15
桜が散る頃に近くの竹やぶの上の方が黄色いのですが、枯れる前兆かと思ったら、どうも若葉が黄色いと言う事でやがて緑になるのだと思います。葉緑体未完成でクロロフィル不足で黄色が出ているだけですか?竹の下の方は緑色で葉緑体があるのだと思いますが、葉緑体が出来ていないのですか?タケノコが伸びた時は葉は緑色だと思うのですが、成長した竹が、葉を変える時だけ黄色くなるのか知りたいのです。紅葉の逆ですか?
もの好きジジイ 様

この質問コーナーをご利用いただきありがとうございます。

「竹の秋」と言う言葉があり、筍(タケノコ)が育って行く春の季節に竹林が黄化することは昔から良く知られているようです。黄色くなるのは冬を越した古い葉で、黄化した葉はやがて落ち葉となって藪の中に散って行きます。ご存知のように竹林は地下茎でつながった全体で一つの個体です。春になると、個体の中で新しく発育するタケノコの部分にエネルギーを集中させるためか、古い葉の活性が低下し、光合成の場である葉緑体に含まれる緑の色素(クロロフィル)が分解されるようです。その結果としてカロテノイドが呈する黄色が目立つことになります。クロロフィルの分解は、既存の光合成装置が日ごとに強まって行く春の光に耐えきれなくなった結果かも知れません。なお、古い葉が散るころには近接する節々から新芽が芽吹き、枝となって展開して行きます。若葉や若枝では光合成の機能が徐々に獲得されて行くので、危険な分子でもあるクロロフィルの濃度が最初は低く抑えられているため、若葉は見方によると黄色っぽく見えるかも知れません。しかし、やがてはタケノコの幹(稈)が展開して生ずる葉と同じように緑色が深まって行きます。古い葉の落葉は、新しく育って行くタケノコの部分に光が良く当たる空間を一時的に確保するための工夫として理解することも出来ます。

私の観察では、古葉の黄化と新葉の展開は継続して進行する過程のように見えます。もしかしたら、黄色く見えたのは落葉前の古葉だったのではないでしょうか。竹の種類と生息地域によっては黄化は現在進行中ですので、確認してみられることをお勧めします。
佐藤 公行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2021-05-01