質問者:
高校生
イマイ
登録番号5053
登録日:2021-04-20
学校でタンニンについての勉強をしていて、可溶性と不溶性について疑問がありました。フォーリンデニス法
不溶性タンニンは溶けないとのことですが、調べ方は味覚のみでしか分からないのでしょうか?
フォーリンデニス法などの試験では調べられないのでしょうか。
よろしくお願いします。
イマイさん
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
まずタンニンという語は化学構造と関係する用語ではなく動物の皮をなめす(鞣す、tan)作用をもつ植物起源の物質群を指す用語であることをご理解下さい。多種類のタンニン物質がありますが共通の構造としてポリフェノールが構成要素となっています。しかし、ポリフェノール類はすべてタンニンではありません。動物の皮なめしにはいろいろな方法が古来行われてきたようですが、その1つに動物皮を植物汁液(樹皮や果実の抽出物)に浸し蛋白質などを不溶化してよく揉み、不溶化した水溶性蛋白質その他を除き、繊維蛋白質を安定化させて保温性や防腐性をもたせる処理法があります。このように蛋白質、アルカロイド、金属などと反応して不溶性沈殿を生成する作用を収斂作用と言いますが、収斂作用の強さはタンニンの種類によって大きく異なります。弱いものではお茶のタンニンのように渋みを感ずる程度ですが、強いものでは渋柿を囓ったときのように強い渋みと変性不溶化された口内蛋白質がぼろぼろと感ずるほどです。また、収斂作用は医薬の領域でも重要で、これらの化学的研究が盛んに行われてきています。その結果、判ってきたことは収斂作用のある植物天然化合物は非常に多種類あり、酸やアルカリ、酵素タンナーゼで処理すると加水分解されて没食子酸(gallic acid)あるいはその2量体に相当するエラグ酸(ellagic acid)と糖(ブドウ糖、キシロースなど)または糖アルコール(キナ酸、シキミ酸など)を生ずる加水分解型と加水分解されない縮合型に大別されることです。加水分解型タンニンは主にエステル結合(酸素原子を挟んだ炭素-炭素結合)で重合しているのに対し、縮合型タンニンではカテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキンなどが分子を構成する炭素同士が直接結合して重合しています。加水分解型タンニンの代表とも言えるタンニン酸は糖に没食子酸残基が5個から12,3個いろいろな組み合わせて結合されたものの混合物のようで、水酸基もたくさんありますから殆どは水溶性です。しかし、縮合型タンニンは重合度の小さいものでは水溶性でも、重合度が大きくなると親油性となり有機溶剤で抽出することになります(例:桂皮油に含まれるタンニン)。また細胞壁と結合しているタンニンもあるようで、これらは不溶性タンニンに相当します。
「タンニンの不溶化」「不溶性のタンニン」と言う表現は、元来可溶性である渋柿の渋(タンニン)が渋抜きの処理(エタノール処理、温湯処理、皮を剥いた後乾燥させる、冷暗所に長期間放置する-熟柿-など)で不溶化するのは、処理過程で生成したアセトアルデヒドが架橋剤となって可溶性タンニンを重合して「不溶性」になったときにも用いられています。渋抜きをしたカキ果肉も酸などで処理すると架橋重合したタンニンが加水分解され再び渋くなることは知られています(登録番号2981)。
フォリン・デニス法はフェノール基の還元性を利用した比色測定ですから水可溶性物質でなければ適用できません。不溶性タンニンの定量には、保護基を導入後、分解し、分解生成物量を測定するなどしているようです。
このQ&Aコーナーには「タンニン」についての項目がたくさんありますのでそれらをご参照下さい。
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
まずタンニンという語は化学構造と関係する用語ではなく動物の皮をなめす(鞣す、tan)作用をもつ植物起源の物質群を指す用語であることをご理解下さい。多種類のタンニン物質がありますが共通の構造としてポリフェノールが構成要素となっています。しかし、ポリフェノール類はすべてタンニンではありません。動物の皮なめしにはいろいろな方法が古来行われてきたようですが、その1つに動物皮を植物汁液(樹皮や果実の抽出物)に浸し蛋白質などを不溶化してよく揉み、不溶化した水溶性蛋白質その他を除き、繊維蛋白質を安定化させて保温性や防腐性をもたせる処理法があります。このように蛋白質、アルカロイド、金属などと反応して不溶性沈殿を生成する作用を収斂作用と言いますが、収斂作用の強さはタンニンの種類によって大きく異なります。弱いものではお茶のタンニンのように渋みを感ずる程度ですが、強いものでは渋柿を囓ったときのように強い渋みと変性不溶化された口内蛋白質がぼろぼろと感ずるほどです。また、収斂作用は医薬の領域でも重要で、これらの化学的研究が盛んに行われてきています。その結果、判ってきたことは収斂作用のある植物天然化合物は非常に多種類あり、酸やアルカリ、酵素タンナーゼで処理すると加水分解されて没食子酸(gallic acid)あるいはその2量体に相当するエラグ酸(ellagic acid)と糖(ブドウ糖、キシロースなど)または糖アルコール(キナ酸、シキミ酸など)を生ずる加水分解型と加水分解されない縮合型に大別されることです。加水分解型タンニンは主にエステル結合(酸素原子を挟んだ炭素-炭素結合)で重合しているのに対し、縮合型タンニンではカテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキンなどが分子を構成する炭素同士が直接結合して重合しています。加水分解型タンニンの代表とも言えるタンニン酸は糖に没食子酸残基が5個から12,3個いろいろな組み合わせて結合されたものの混合物のようで、水酸基もたくさんありますから殆どは水溶性です。しかし、縮合型タンニンは重合度の小さいものでは水溶性でも、重合度が大きくなると親油性となり有機溶剤で抽出することになります(例:桂皮油に含まれるタンニン)。また細胞壁と結合しているタンニンもあるようで、これらは不溶性タンニンに相当します。
「タンニンの不溶化」「不溶性のタンニン」と言う表現は、元来可溶性である渋柿の渋(タンニン)が渋抜きの処理(エタノール処理、温湯処理、皮を剥いた後乾燥させる、冷暗所に長期間放置する-熟柿-など)で不溶化するのは、処理過程で生成したアセトアルデヒドが架橋剤となって可溶性タンニンを重合して「不溶性」になったときにも用いられています。渋抜きをしたカキ果肉も酸などで処理すると架橋重合したタンニンが加水分解され再び渋くなることは知られています(登録番号2981)。
フォリン・デニス法はフェノール基の還元性を利用した比色測定ですから水可溶性物質でなければ適用できません。不溶性タンニンの定量には、保護基を導入後、分解し、分解生成物量を測定するなどしているようです。
このQ&Aコーナーには「タンニン」についての項目がたくさんありますのでそれらをご参照下さい。
今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2021-06-16