質問者:
教員
みどり
登録番号5080
登録日:2021-05-18
倍数化は減数分裂のときにおこると聞きました。どのようにして倍数体が生じるのでしょうか。例えばコムギの倍化ですが、AA×BB→AB倍化してAABBとなります。ABは不稔ですが、時々減数分裂の不分離で卵細胞がAB、精細胞がABが生じて受精によって受精卵がAABBとなるのでしょうか?それともAABBの卵細胞が生じて単為生殖みたいにAABBが生じるのでしょうか?減数分裂の異常ではなく、スイカのコルヒチン処理のように体細胞で染色体の倍化が起こりAABBの個体が生じることはないのでしょうか?教科書にはただ倍化としか書いていないので、詳しいことを教えていただけないでしょうか?
コムギの倍数化
みどり さん
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。お待たせしました。
ご質問は横浜私立大学:木下 哲先生のご紹介で遺伝育種学がご専門の横浜市立大学木原生物学研究所: 川浦香奈子先生に伺いました。配偶子形成時の異常減数分裂が主たる原因のようです。
【川浦先生のお答え】
倍数化は、体細胞での染色体倍加や多精受精によってもおこり得ますが、非還元配偶子(2n配偶子)ができることによりおこることが多いと言われます。非還元配偶子とは、減数分裂のとき、染色体数が半数になる分裂がおきず、染色体数が体細胞の染色体数と同じである配偶子です。倍数体の植物種では、二倍体の植物種より非還元配偶子ができやすいという報告もあります。
非還元配偶子を通した倍数化には、過程が3つ考えられます。1つ目は、非還元配偶子が受精する直接的な過程です。つまり、AAという種からできた非還元配偶子(AA)とBBという種からできた非還元配偶子(BB)が受精することで、AABBという倍数体ができます。この1つ目の過程は、原理的には考えられますが、二倍体の植物種では非還元配偶子はあまりできないので、稀な過程と考えられています。2つ目は、AAという種とBBという種から、まず、ABというF1個体ができます。このF1個体で非還元配偶子(AB)ができ、非還元配偶子同士が受精してAABBという個体ができるという過程です。3つ目は、AAという種から非還元配偶子(AA)ができ、BBという種の通常の配偶子(B)と交雑して、AABという個体ができます。この個体は不稔になりやすいですが、非還元配偶子(AAB)ができることがあります。この配偶子(AAB)と、BBの通常の配偶子(B)が交雑し、AABBという個体ができるという二段階の過程です。
コムギは六倍体ですが、2つ目の過程で倍数体になったと考えられています。実際に、四倍体コムギ(AABB)と二倍体コムギ(DD)を人工的に交配してできた三倍体コムギ(ABD)において、非還元配偶子がある頻度ででき、六倍体(AABBDD)になった種子が自然にできることが確認されています。また、三倍体コムギにおいて、減数第一分裂(meiosis I)に細胞質分裂が正常におきずに非還元配偶子ができる様子が観察されていることから、非還元配偶子ができるメカニズムも解明されつつあります。
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。お待たせしました。
ご質問は横浜私立大学:木下 哲先生のご紹介で遺伝育種学がご専門の横浜市立大学木原生物学研究所: 川浦香奈子先生に伺いました。配偶子形成時の異常減数分裂が主たる原因のようです。
【川浦先生のお答え】
倍数化は、体細胞での染色体倍加や多精受精によってもおこり得ますが、非還元配偶子(2n配偶子)ができることによりおこることが多いと言われます。非還元配偶子とは、減数分裂のとき、染色体数が半数になる分裂がおきず、染色体数が体細胞の染色体数と同じである配偶子です。倍数体の植物種では、二倍体の植物種より非還元配偶子ができやすいという報告もあります。
非還元配偶子を通した倍数化には、過程が3つ考えられます。1つ目は、非還元配偶子が受精する直接的な過程です。つまり、AAという種からできた非還元配偶子(AA)とBBという種からできた非還元配偶子(BB)が受精することで、AABBという倍数体ができます。この1つ目の過程は、原理的には考えられますが、二倍体の植物種では非還元配偶子はあまりできないので、稀な過程と考えられています。2つ目は、AAという種とBBという種から、まず、ABというF1個体ができます。このF1個体で非還元配偶子(AB)ができ、非還元配偶子同士が受精してAABBという個体ができるという過程です。3つ目は、AAという種から非還元配偶子(AA)ができ、BBという種の通常の配偶子(B)と交雑して、AABという個体ができます。この個体は不稔になりやすいですが、非還元配偶子(AAB)ができることがあります。この配偶子(AAB)と、BBの通常の配偶子(B)が交雑し、AABBという個体ができるという二段階の過程です。
コムギは六倍体ですが、2つ目の過程で倍数体になったと考えられています。実際に、四倍体コムギ(AABB)と二倍体コムギ(DD)を人工的に交配してできた三倍体コムギ(ABD)において、非還元配偶子がある頻度ででき、六倍体(AABBDD)になった種子が自然にできることが確認されています。また、三倍体コムギにおいて、減数第一分裂(meiosis I)に細胞質分裂が正常におきずに非還元配偶子ができる様子が観察されていることから、非還元配偶子ができるメカニズムも解明されつつあります。
川浦 香奈子(横浜市立大学 木原生物学研究所)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2021-06-21
今関 英雅
回答日:2021-06-21