一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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熱ショックタンパク質について

質問者:   高校生   しんごう
登録番号5091   登録日:2021-05-26
私の学校では簡単に言うと自分が気になることを研究する活動の授業があります、
そして私は熱ショックタンパク質の植物への影響を調べるため、オオカナダモを用いて25,30,35,40,45,50,55℃の水温にてそれぞれ10分間同じ水温を保ちながら、pHとDO(溶存酸素量)を計測しました。その結果、水温が高ければ高いほどpHが低下し、DOも低下していきました。
①pHは特に45℃から、②DOは特に35℃から急激に下がっていったという結果になりました。
さらに私たちはエバンスブルー染色液を使い、各温度で10分間放置したあとの細胞死の割合を調べたところ45℃以降から青く染ってる細胞が多く見られたことから③45℃から細胞死の割合が増えるという結果に至りました。
①,②,③からpHが45℃から急激に低下したのは細胞が死んだことにより酸性の内容物が流出したことが原因と仮定しました。

ここで質問なのですが、

(質問1)私はDOが35℃から急激に低下したのは眠ショックタンパク質を作るために呼吸を促進させたと考えているのですが、どう思いますか?

(質問2)熱ショックタンパク質が発現することにより、植物に熱耐性以外になにか影響がありますか?

拙い文章で申し訳ありません。
どうかご回答よろしくお願いします。
しんごう 君

この質問コーナーをご利用いただきありがとうございます。ご質問には甲南大学の西村幹夫先生から下記の回答文を頂戴しましたので、参考になさってください。なお、オオカナダモを入れてない水の溶存酸素濃度などは温度によってどのように変化するのでしょうか(コントロール)。

【西村幹夫先生からの回答】
自分の気になることを研究するという授業があるのは楽しいですね。質問を読んで、私も35度から溶存酸素量が急激に低下する現象は面白いと思いました。これが考えられているように熱ショックタンパク質を促進させた結果かどうかは実験で示してほしいと思います。

まず溶存酸素量の増減に関与するのは主として、呼吸と光合成です。実験の明暗などの条件が分かりませんが、暗所で行えれば、光合成の関与は排除できます。また、明所で行っている場合、呼吸と光合成の阻害剤を用いれば、この溶存酸素量の減少がどちらに起因するかあるいは両者が関わっているのかについての知見が得られることが期待できます。さらに、これらの阻害剤実験により、貴君の観察した溶存酸素の減少が、呼吸の促進であることが判明し、溶存酸素量の低下を阻害した場合、オオカナダモの高温耐性が低くなれば、この呼吸の促進が高温耐性獲得に寄与していることが示唆されることになります。ここに示した実験は一例であり、使用する試薬や装置に制限があるでしょうから、担任の先生と相談して検討いただければと思います。こうしたコメントが参考になれば幸いです。

質問2に関して、熱ショックタンパク質は高温だけではなく他のストレス因子(重金属、エタノール、活性酸素種、電子伝達阻害剤、高塩など)によっても発現が誘導されるので、ストレスタンパク質とも呼ばれます。いくつかのタンパク質ファミリーに分類され、それぞれに細胞質、核、ミトコンドリア、葉緑体、小胞体などに局在するものがあり、高温ストレスや他の環境ストレスに対する耐性の獲得に寄与することが解析され、報告されています。
西村 幹夫(甲南大学理工学部)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2021-06-23
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