一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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種子の発芽と養分

質問者:   教員   ロケット先生
登録番号5093   登録日:2021-05-28
子葉の中には、でんぷんが含まれていますが、そのでんぷんは、水や適度な温度、空気の条件で、どんどん増えるのでしょうか。

授業で、
種子をヨウ素液につけ、デンプンがあることは分かりました。

ですが、袋からそのまま出した種子も、
水に少しつけてから切った種子も、同じくらい紫になりました。

なので、デンプンの量がどんどん増えているのか、教えていただきたいです。

授業で使用したのは、ライン菜豆(つるなしいんげん)の種です。

ロケット先生 様

みんなのひろば「植物Q&A」へようこそ。
質問を歓迎します。

子葉は、胚の中で最初にできる葉で、植物の種類によっては、デンプンなどの栄養素を沢山蓄えているものがあります。子葉の役割は、発芽した植物が本葉を作り、自前で光合成をおこなうまでの栄養補給にとって重要です。(「植物Q&A」で「子葉」を検索語として調べると200以上の回答が出てきますが、登録番号4750などが特に参考になるでしょう。)
デンプンは、グルコース(ブドウ糖)分子が多数重合してできた化合物で、植物にとってエネルギー貯蔵の役割をしています。光合成が盛んな時は、葉でグルコースがどんどん作られますが、細胞中のグルコース濃度が高くなりすぎると浸透圧の関係で植物にとって不具合が生じるので一部の植物はグルコースを高分子のデンプンの形でため込みます。ため込み方は植物により異なり、子葉にため込むものもありますが、種子の胚乳や貯蔵組織にため込むものも多数あります。貯蔵組織は植物の種類によって異なり、イネ、小麦、トウモロコシなどは種子ですが、サツマイモでは貯蔵根、ジャガイモでは塊茎です。
豆類は子葉にデンプンなどの栄養素を蓄えますが、デンプンなどの貯蔵物質は、発芽後の植物体が茎をのばし葉を広げるための栄養源となります。子葉のデンプンは、植物体が成長して葉を展開するにつれて消費され、減少するはずです。「ロケット先生」は、「袋からそのまま出した種子も、水に少しつけてから切った種子も、同じくらい紫になりました。」と書いていますが、水につけただけでは、植物体の成長も顕著に起きていないので、まだデンプンの分解があまり進まず、減少が目で見ても確認できなかったことだと思います。植物体が成長するにつれ、子葉中のデンプンは使い果たされるはずです。デンプンの増減を正確に調べるには、生化学的に定量的に測定する必要があり、機器や測定試薬を必要なため、初等中等の教育機関では困難な実験となるでしょう。
子葉のデンプンについては、本「植物Q&A」で「葉のデンプン」を検索語として調べると、特に登録番号2236番などが、参考になると思います。

(ご参考までに):初等中等の教育機関でできる実験としては、インターネットに次のような実験例が見られます;生育中のジャガイモの葉について、光を当てた葉とその一部をアルミ箔で覆って数日置いたものを比較材料とし、熱湯処理、エタノールによるクロロフィルの脱色、ヨードデンプン反応により、デンプンの蓄積量に差が見られる。
櫻井 英博(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2021-06-18
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