一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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植物のアルビノについて

質問者:   会社員   星人
登録番号5100   登録日:2021-06-03
斑入り植物(蛇の目赤松や紅孔雀、五葉松の花火、吹雪など)と銀芽性(銀芽石化檜や杉の白妙など)の植物との違いは何ですか?
斑入り植物は生物でいうアルビノ、色素欠乏症だと認識しています
斑入りは日光不足などでクロロフィルを増やす必要がある場合などに消えたりしますが基本的に意識して育てていれば斑は維持できます
しかし銀芽性の植物は新芽のみ白くなりますが成長すれば緑になっていき、新たな新芽が白く発生してきます
銀芽性の植物はアルビノとは違う現象なのでしょうか?
またアルビノならばどのような違いがありますか?
星人 さん

このコーナーをご利用いただきありがとうございます。ご質問には岡山大学の坂本 亘先生から下記の回答文を頂戴しました。参考になさってください。

【坂本先生からの回答】
「斑入り」については、このコーナーでもよく質問がありまして、登録番号4099, 0468, 0235などにも答えています。少し古いものもありますが、参考にしてください。
さて、星人さんの質問の中に出てくる「アルビノ」ですが、完全に葉緑素ができないで致死になるもので、遺伝学では「斑入り」とは区別しています。それと、「銀芽性の植物」というのはビレッセント(virescent)と呼ぶことがあり、斑入りとは区別します。ビレッセントでは、緑の葉ができる能力は持っているのですが、葉緑素(正しくは葉緑体)を作る能力が遅れている、あるいは環境要因によって遅れてしまい、まだらになってしまいます。

マツの斑入りについて書かれていますが、これはどちらかというと斑入りではなくて、ビレッセントに近いように思いました。育て方によってまだらが出る、例えば、夜温と昼間の温度の寒暖差などが影響するのではないでしょうか。冬に顕著で、そのままにしておくて緑が回復する部分も多くないでしょうか。単子葉のイネでは「ゼブラ(または縞)」という変異体が知られていて、これも夜と昼の温度差によると言われています。登録番号4099でも説明しましたが、斑入りやビレッセントは温度、光の強さ、栄養条件によって変わることがよくあります。

それぞれの違いを整理すると、以下のようになります。「斑入り」は、葉ができるとき、緑と白のところが同時にできてまだらになります。ポトスの葉などがそうですが、その結果、不規則な斑入りになります。一方、「ビレッセント」では、葉ができるとき、緑だけか白だけのどちらか一方が起きて、ある種のパターンになっているのが違いです。どうして斑入りになるのか、詳しいことはわからないのですが、葉緑体がうまくできない条件で植物が生き延びようとしたとき、葉を緑か白にすることを選択し、中間の黄色のような状態を避けているのかもしれません。「アルビノ」は、葉緑素が全くできず、どんな条件でも死んでしまいます。

緑になるのは葉緑体で光合成をするためですが、斑入りになるのは、光合成をするならしっかりする、しないならやらない、という選択肢が合理的だからではないかと思います。斑入りの話題で、人生の教訓みたいな話になってしまいましたが、緑か白にすることでコストダウンをうまくやっているのかもしれません。
坂本 亘(岡山大学資源植物科学研究所)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2021-06-11