質問者:
高校生
るー
登録番号5101
登録日:2021-06-04
水入りの瓶に挿したオリヅルランの子株を観察しています。挿した初期に根が伸びましたが数枚の葉が枯れました。ですがまた根が伸び始め、新葉が出てくるようになり、2ヶ月ほど経った現在では挿した当時より大きくなっています。みんなのひろば
水に挿したオリヅルラン
そこで、植物は無機窒素化合物から窒素を得ること(=空気から窒素を得られない)・細胞中の核や葉緑体などの生成にタンパク質が必要であることを鑑みると、土壌や肥料を与えていないのにどこから窒素源を得たのだろう?と不思議に思いました。
仮説と言えるのかわかりませんが、何か他の生物(バクテリアなど)が得た窒素をオリヅルランが吸収したのではないかと思いました。
そう言えるのは、瓶の底がいつの間にか緑色がかり、それは生き物(ラン藻?)で、その生き物がオリヅルランと関わったのではないかと思ったからです。
このことをどう思うか、お教えください。
長いですが、下は詳細です。
【2ヶ月ほど前、オリヅルランの子株をランナーから切って、水を入れた瓶に挿しました。小さいもので、10cm四方の容器にちょうど収まるくらいでした。
最初の方は、太い根が一本伸びていったものの数枚しかなかった葉が枯れていき、じきに根の成長が遅くなり葉が2枚まで減りました。
ですが1ヶ月経ったぐらいの頃から新葉が出て来、根も挿した当時ほどの速さで成長するようになりました。
現在は葉が4枚+新葉1枚、根は太いものが数本、太い根が出たあとにそこから細い根が出ました。(オリヅルランは単子葉類ですが…)
瓶からオリヅルランを出したり、瓶の掃除をしたことはありません。水が減っていたら、水道水を何日か置いたものを足しています。
1ヶ月経った頃には瓶の底が緑がかっていて、根と葉の間の部分(枯れた部分が少し溜まっている)に白い毛のようなカビが生えていました。今見てみると、最初に出て底まで達した太い根は瓶の底と同じ色で覆われていました。底にまだ達していない根はもっと白くもやしのようです。】
るーさん
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
オリヅルランは熱帯アフリカ原産の単子葉類で原種には葉に斑がないとのことです。現在の園芸種には葉の外縁あるいは中央に筋状の斑があり、葉幅の細いもの、広いもの、葉が比較的柔らかいもの、堅いものなど各種があるようです。種子繁殖も出来ますが、子株の株分けやランナーによる栄養繁殖が容易で愛好家に好まれている観葉植物の1つです。だいぶ以前に、NASAが宇宙船に乗せてガス環境の変化を調べた結果、フォルムアルデヒドを吸収する能力があると話題になったことがあります。そのため室内で栽培することで室内ガス環境を改善するとも言われています。しかし、その実用的効果については判りません。
ご質問の記載から、株分けで得た子株を水に挿し、水を取り替えることなく不足すれば追加することを繰り返して栽培され、生長も見られたようです。肥料を与えないのに新たな生長が見られた点が不思議と言えば不思議ですが、次のようなことが考えられます。
最初の子株は、大きな株に出来ていた新芽を含む株を切り出したと思われます。この際には、すでに、根茎や根の周辺に枯れた葉や根が付着していたことは間違いないと思います。さらに、植物の根にはたくさんの微生物(主に菌根菌と称する菌類)が共生しています。また、根からは各種の有機酸、アミノ酸、蛋白質、粘液物質(多糖類が主)などが分泌されています。その結果、水だけを与えたつもりでも、子株と接する水にはこれらの有機物や細菌類、菌類によるそれらの分解物のほか容器からも僅かの金属イオン類が溶け込んでおり、これらが植物の初期生長の栄養源となっているはずです。時間の経過とともに微生物の種類、量も増加して根からの分泌物ばかりでなく、死んだ細胞、組織も分解しますから、植物にとっての栄養量もある程度増加していきます。その現れの一つが、容器の底に見られるようになった緑色の着色物で、ご想像のとおり藍藻や微細緑藻でしょう。藍藻は酸素発生型の光合成をするとともに窒素固定を行ってアンモニアを生成しますので窒素供給の点では問題はなくなるでしょう。また、最初の子株に付着していた死んだ細胞、組織(移植後死んだものも含む)の量にもよりますが、これらは必要なリン、カリウムはじめ栄養イオンの供給源となります。
移植後最初のころに葉が枯れたと記載されていますが、枯れた葉からはリン、窒素は母体に移動回収されますので、これらは新しい葉や根の生長を支えることはあり得ますが、長時間、栄養を与えなければ、必要な栄養素の一つでも不足すれば生長(物質生産)を継続することは出来ませんので、いずれ生長は止まるはずです。
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
オリヅルランは熱帯アフリカ原産の単子葉類で原種には葉に斑がないとのことです。現在の園芸種には葉の外縁あるいは中央に筋状の斑があり、葉幅の細いもの、広いもの、葉が比較的柔らかいもの、堅いものなど各種があるようです。種子繁殖も出来ますが、子株の株分けやランナーによる栄養繁殖が容易で愛好家に好まれている観葉植物の1つです。だいぶ以前に、NASAが宇宙船に乗せてガス環境の変化を調べた結果、フォルムアルデヒドを吸収する能力があると話題になったことがあります。そのため室内で栽培することで室内ガス環境を改善するとも言われています。しかし、その実用的効果については判りません。
ご質問の記載から、株分けで得た子株を水に挿し、水を取り替えることなく不足すれば追加することを繰り返して栽培され、生長も見られたようです。肥料を与えないのに新たな生長が見られた点が不思議と言えば不思議ですが、次のようなことが考えられます。
最初の子株は、大きな株に出来ていた新芽を含む株を切り出したと思われます。この際には、すでに、根茎や根の周辺に枯れた葉や根が付着していたことは間違いないと思います。さらに、植物の根にはたくさんの微生物(主に菌根菌と称する菌類)が共生しています。また、根からは各種の有機酸、アミノ酸、蛋白質、粘液物質(多糖類が主)などが分泌されています。その結果、水だけを与えたつもりでも、子株と接する水にはこれらの有機物や細菌類、菌類によるそれらの分解物のほか容器からも僅かの金属イオン類が溶け込んでおり、これらが植物の初期生長の栄養源となっているはずです。時間の経過とともに微生物の種類、量も増加して根からの分泌物ばかりでなく、死んだ細胞、組織も分解しますから、植物にとっての栄養量もある程度増加していきます。その現れの一つが、容器の底に見られるようになった緑色の着色物で、ご想像のとおり藍藻や微細緑藻でしょう。藍藻は酸素発生型の光合成をするとともに窒素固定を行ってアンモニアを生成しますので窒素供給の点では問題はなくなるでしょう。また、最初の子株に付着していた死んだ細胞、組織(移植後死んだものも含む)の量にもよりますが、これらは必要なリン、カリウムはじめ栄養イオンの供給源となります。
移植後最初のころに葉が枯れたと記載されていますが、枯れた葉からはリン、窒素は母体に移動回収されますので、これらは新しい葉や根の生長を支えることはあり得ますが、長時間、栄養を与えなければ、必要な栄養素の一つでも不足すれば生長(物質生産)を継続することは出来ませんので、いずれ生長は止まるはずです。
今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2021-07-09