質問者:
高校生
ハヤブサ
登録番号5105
登録日:2021-06-09
高校の授業で植物の生活環を習ったのち、問題集で大学の過去問を見つけたので、復習にと思い解いてみると、その中には原糸体は配偶体?
「図中から配偶体に当たるものを選びなさい」
と言う問題があり、その図にはコケ植物の胞子体のついた雌株と原糸体が描かれていました。
原糸体の知識があやふやだったので辞書で調べたところ、「糸状の配偶体」「配偶体の初期段階」などの記述があったので原糸体も配偶体なんだと思い解答をみたところ、答えは雌株部分だけでした。
これはどちらが正しいのでしょうか。また、配偶体と胞子体の定義がどのようなものなのか教えていただければ幸いです。
ハヤブサ様
質問コーナーにようこそ。回答は、コケ植物を使って発生・環境応答と進化の研究をされている、北海道大学の藤田知道先生にお願いしました。
【藤田先生の回答】
ご質問ありがとうございます。ハヤブサさんは植物の生活環をかなり丁寧に理解しようとされており素晴らしいと思いますが、一般に多くの人にとって植物(陸上植物)の生活環は、普段聞き慣れない用語がたくさん出てきますし、コケ植物やシダ植物など植物の各群により特有の用語もあり理解しにくいですよね。しかし陸上植物の生活史は次のように統一的に理解することでよりスッキリするように思います。全ての陸上植物は、「配偶子(卵、精子など)を作る世代である配偶体」と、「胞子を作る世代である胞子体」の2つの世代があり、この2つが繰り返し交代しています(世代交代)。これが配偶体と胞子体の定義となります。ヒトなどの動物は胞子を作りませんので胞子体はないということになります。
陸上植物では、減数分裂により生じた1倍体(単相、n)の胞子が発芽して、多細胞の配偶体になります。従って配偶体は1倍体です。配偶体は卵や精子(精細胞)といった配偶子を作り、両者が受精することで1細胞の受精卵(接合子)となります。受精卵は2倍体(複相、2n)です。受精卵は分裂を開始し多細胞の胞子体になります。胞子体はやはり2倍体です。やがて胞子体の一部に胞子母細胞が生み出され、この細胞が減数分裂し1倍体である4つの胞子が形成されます。このようにして生じた胞子は再び発芽して配偶体を形成します。陸上植物におけるこのような統一的な生活環と用語を理解した上で各植物群の特徴を比べながら理解していくと良いですね。
この上でコケ植物の生活史を考えます。1倍体である胞子を出発点として、胞子が発芽するとまずは原糸体とよばれる多細胞体となります。その次に原糸体から茎葉体ともよばれる茎と葉の構造を持った植物体が形成されます。コケ植物は蘚類、苔類、ツノゴケ類の3群からなりますが、苔類、ツノゴケ類では、原糸体の発達が悪く多くの種類で茎葉体の代わりに葉状性の葉状体を形成します。一般にコケ植物の原糸体は短命の場合が多く、また肉眼で認識することも難しく、最もよく目にする植物体が茎葉体や葉状体であるために、茎葉体や葉状体を特にコケ植物の植物体(配偶体)としてよぶこともあるようです。しかし厳密には問題集の正答も原糸体と雌株部分の両方が配偶体として正解になると思います。
質問コーナーにようこそ。回答は、コケ植物を使って発生・環境応答と進化の研究をされている、北海道大学の藤田知道先生にお願いしました。
【藤田先生の回答】
ご質問ありがとうございます。ハヤブサさんは植物の生活環をかなり丁寧に理解しようとされており素晴らしいと思いますが、一般に多くの人にとって植物(陸上植物)の生活環は、普段聞き慣れない用語がたくさん出てきますし、コケ植物やシダ植物など植物の各群により特有の用語もあり理解しにくいですよね。しかし陸上植物の生活史は次のように統一的に理解することでよりスッキリするように思います。全ての陸上植物は、「配偶子(卵、精子など)を作る世代である配偶体」と、「胞子を作る世代である胞子体」の2つの世代があり、この2つが繰り返し交代しています(世代交代)。これが配偶体と胞子体の定義となります。ヒトなどの動物は胞子を作りませんので胞子体はないということになります。
陸上植物では、減数分裂により生じた1倍体(単相、n)の胞子が発芽して、多細胞の配偶体になります。従って配偶体は1倍体です。配偶体は卵や精子(精細胞)といった配偶子を作り、両者が受精することで1細胞の受精卵(接合子)となります。受精卵は2倍体(複相、2n)です。受精卵は分裂を開始し多細胞の胞子体になります。胞子体はやはり2倍体です。やがて胞子体の一部に胞子母細胞が生み出され、この細胞が減数分裂し1倍体である4つの胞子が形成されます。このようにして生じた胞子は再び発芽して配偶体を形成します。陸上植物におけるこのような統一的な生活環と用語を理解した上で各植物群の特徴を比べながら理解していくと良いですね。
この上でコケ植物の生活史を考えます。1倍体である胞子を出発点として、胞子が発芽するとまずは原糸体とよばれる多細胞体となります。その次に原糸体から茎葉体ともよばれる茎と葉の構造を持った植物体が形成されます。コケ植物は蘚類、苔類、ツノゴケ類の3群からなりますが、苔類、ツノゴケ類では、原糸体の発達が悪く多くの種類で茎葉体の代わりに葉状性の葉状体を形成します。一般にコケ植物の原糸体は短命の場合が多く、また肉眼で認識することも難しく、最もよく目にする植物体が茎葉体や葉状体であるために、茎葉体や葉状体を特にコケ植物の植物体(配偶体)としてよぶこともあるようです。しかし厳密には問題集の正答も原糸体と雌株部分の両方が配偶体として正解になると思います。
藤田 知道(北海道大学)
JSPP広報委員長
相田 光宏
回答日:2021-07-19
相田 光宏
回答日:2021-07-19