一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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飛び葉が発生する植物について

質問者:   自営業   hal-co
登録番号5124   登録日:2021-06-18
我が庭にあるシラカシの特定の枝(複数)に,毎年飛び葉と金魚葉が出てきます。里山で自然発生したシラカシでも金魚葉を見たことがあります。クロトンノキとツバキにこの現象があることは知っていましたが,シラカシにも発生していることで共通点を考えると常緑ということ以外はわかりません。

「トウダイグサ科クロトンノキの飛び葉について」(登録番号2677 登録日:2012-07-10)は拝読しました。
その後,新たな見知や研究結果があれば教えてください。
hal-coさん

ご質問ありがとうございます。回答は、食虫植物を材料に葉の進化について研究されているヴュルツブルク大学(University of Würzburg)の福島健児先生にお願いしました。

【福島先生の回答】
ご質問ありがとうございます。以前の回答で言及したシロイヌナズナの飛び葉は、私の知る限り2報の論文で報告されていて、いずれも日本植物生理学会の発行する英文誌 Plant and Cell Physiology上に報告されたものです。

そのうちの一報、Zhoung and Ye (2004)では、葉の表側の性質を司る遺伝子が過剰にはたらいてしまう変異体で、葉の裏側から飛び葉を作る様子がFig. 5に捉えられています。クロトンの飛び葉にそっくりです。
https://academic.oup.com/pcp/article/45/4/369/1922021

もう一報のKojima et al. (2011)で報告された変異体は、葉の表裏の性質を司る遺伝子が複数壊れたもので、Fig. 6に飛び葉を作る個体の写真が載せられています。
https://academic.oup.com/pcp/article/52/8/1259/1822276

しかし、飛び葉の形作りについては、以後ほとんど進展しておりません。ですので、「葉の表裏を決める仕組みがおかしくなると飛び葉ができる」というところまでが現在分かっていることになります。

ところで、葉の表裏の作り分けは、植物にとってとても重要です。例えば、多くの植物は葉の裏側により多くの気孔を作りますが、誤って表側に多数作ってしまうと光合成や蒸散のバランスが崩れてしまいます。この表裏を作り分ける仕組みは古くから被子植物に備わっているもので、クロトンノキ、ツバキ、シラカシ、そしてシロイヌナズナ、これらすべての共通祖先はすでに持っていたと考えられています。仕組みが共通なら、それが偶然壊れたときに同じような故障の仕方(=飛び葉・金魚葉)になるのも不思議ではありません。常緑樹以外にも共通する仕組みですから、飛び葉を作る植物は他にもきっといるはずです。
福島 健児(University of Würzburg)
JSPP広報委員長
相田 光宏
回答日:2021-07-16
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