質問者:
その他
二上山の風
登録番号5131
登録日:2021-06-23
つる植物になる遺伝子について教えてください。蔓になる遺伝子
ツルマメはダイズの原種であると本で読みました。ツルマメに蔓になる遺伝子と言うものがあって、それを取り除くとダイズのような直立の植物になるのでしょうか。また逆にダイズに蔓になる遺伝子というものを組み込むと蔓のダイズができるのでしょうか。
もっと一般的に蔓になる遺伝子と言うものが存在して、ある植物Aにその遺伝子を組み込むとつる植物aができるのでしょうか。
ツルマメがダイズになるには長い間の人為的な選択化?によるものだとは思いますが、このことは蔓をつくる遺伝子と言うものが存在するということを意味しているように思えます。
二上山の風様
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。蔓の形成を含めて全ての形態形成の指令の大元はもちろん遺伝子にあります。蔓(茎が巻いて成長するもの)性の植物は草本も木本もたくさんありますが、いずれも自力では直立した成長(伸長)ができません。というよりは、自力で直立した茎(幹)を作るためには堅固な機械的構造(組織)が必要で、それを作るためのエネルギーを使うよりは他の支えを利用して、他力で成長していく方式を選んでいると言った方がいいかもしれません。蔓のことについては本コーナーでたくさんの質問がありますので、それらの回答を読んでください。登録番号2009とその回答の中で挙げてある登録番号の質問も参考にしてください。簡単に言うと、蔓は伸長成長している茎の先端が伸びて他の植物や棒状の物に触ると接触した側と反対側の表皮細胞が伸びて屈曲を起こします。バイメタルのような仕組みです。それが繰り返されるわけです。このような運動を接触屈性と呼んでいます。もし蔓の形成に関与する遺伝子が欠如するか、異常になれば、その植物はまっすぐ伸びることになりますが、直立できる構造体ではありませんので、地面を這う匍匐茎のようになります。つる性植物が支柱無しで成長すると横に伸びていきますね。
さて、ご質問で取り上げておられるのはツルマメ/ダイズの例ですが、他にもヤブツルアズキ(アズキの原種と言われている)/アズキ、インゲン(蔓あり)/ツルナシインゲン、アサガオ(普通の蔓性)/キダチ(蔓なしアサガオ)など類似の例はたくさんあります。これらの場合蔓なしは茎が伸びない矮性変異体です。矮性変異体は野生型でも蔓性ではない直立型の植物にもたくさんあります。これらの植物は蔓の形成に関与する遺伝子に問題があるというよりは、茎の伸長成長が抑制されていると言った方がいいでしょう。では、何が原因で矮性になるかというと、ほとんどの場合伸長成長を調節している植物ホルモンに関する異常です。伸長を促すホルモンの代表的なものはジベレリンです。たね無しブドウを作るのに使われるホルモンです。植物がジベレリンを自分で合成できないと矮性になります。このようなジベレリン欠損体は外部からジベレリンを与えてやると正常の伸長成長を回復できます。ツルナシインゲン、キダチアサガオなどにジベレリンを与えると、蔓が形成されてきますが、これは伸長成長が正常に戻ったためで、もともと茎はつる性なのでつるになるわけです。したがって、この場合は蔓形成に関与する遺伝子ではなくて、伸長成長に関わる遺伝子(ホルモン合成の)の問題ということになります。さらに、矮性を示す植物にはジベレリン非感受性のものがたくさんあります。これらは外からジベレリンを与えても伸長成長は起きません。これらの矮性ではジベレリンの合成は正常なのですが、ジベレリンが細胞内で作用する過程に異常があります。ジベレリン(他のホルモンも同じです)が作用する場合、まずジベレリンは化学信号として最初にジベレリンの受容体で受容(感知)されないといけません。受容されると信号伝達系によってその信号が伝えられ、最終的に細胞の伸長が起きます。ジベレリン非感受性矮性はこの受容・伝達の過程に異常があることがわかっています。ジベレリンの他にブラシノライドというステロイド系の植物ホルモンも茎伸長成長に関与しており、ブラシノライドに関係する矮性も幾つか知られています。
栽培種の蔓なし品種は、突然変異で起きた矮性株を育種したものです。蔓なしの方が栽培に都合が良い場合もあります。
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。蔓の形成を含めて全ての形態形成の指令の大元はもちろん遺伝子にあります。蔓(茎が巻いて成長するもの)性の植物は草本も木本もたくさんありますが、いずれも自力では直立した成長(伸長)ができません。というよりは、自力で直立した茎(幹)を作るためには堅固な機械的構造(組織)が必要で、それを作るためのエネルギーを使うよりは他の支えを利用して、他力で成長していく方式を選んでいると言った方がいいかもしれません。蔓のことについては本コーナーでたくさんの質問がありますので、それらの回答を読んでください。登録番号2009とその回答の中で挙げてある登録番号の質問も参考にしてください。簡単に言うと、蔓は伸長成長している茎の先端が伸びて他の植物や棒状の物に触ると接触した側と反対側の表皮細胞が伸びて屈曲を起こします。バイメタルのような仕組みです。それが繰り返されるわけです。このような運動を接触屈性と呼んでいます。もし蔓の形成に関与する遺伝子が欠如するか、異常になれば、その植物はまっすぐ伸びることになりますが、直立できる構造体ではありませんので、地面を這う匍匐茎のようになります。つる性植物が支柱無しで成長すると横に伸びていきますね。
さて、ご質問で取り上げておられるのはツルマメ/ダイズの例ですが、他にもヤブツルアズキ(アズキの原種と言われている)/アズキ、インゲン(蔓あり)/ツルナシインゲン、アサガオ(普通の蔓性)/キダチ(蔓なしアサガオ)など類似の例はたくさんあります。これらの場合蔓なしは茎が伸びない矮性変異体です。矮性変異体は野生型でも蔓性ではない直立型の植物にもたくさんあります。これらの植物は蔓の形成に関与する遺伝子に問題があるというよりは、茎の伸長成長が抑制されていると言った方がいいでしょう。では、何が原因で矮性になるかというと、ほとんどの場合伸長成長を調節している植物ホルモンに関する異常です。伸長を促すホルモンの代表的なものはジベレリンです。たね無しブドウを作るのに使われるホルモンです。植物がジベレリンを自分で合成できないと矮性になります。このようなジベレリン欠損体は外部からジベレリンを与えてやると正常の伸長成長を回復できます。ツルナシインゲン、キダチアサガオなどにジベレリンを与えると、蔓が形成されてきますが、これは伸長成長が正常に戻ったためで、もともと茎はつる性なのでつるになるわけです。したがって、この場合は蔓形成に関与する遺伝子ではなくて、伸長成長に関わる遺伝子(ホルモン合成の)の問題ということになります。さらに、矮性を示す植物にはジベレリン非感受性のものがたくさんあります。これらは外からジベレリンを与えても伸長成長は起きません。これらの矮性ではジベレリンの合成は正常なのですが、ジベレリンが細胞内で作用する過程に異常があります。ジベレリン(他のホルモンも同じです)が作用する場合、まずジベレリンは化学信号として最初にジベレリンの受容体で受容(感知)されないといけません。受容されると信号伝達系によってその信号が伝えられ、最終的に細胞の伸長が起きます。ジベレリン非感受性矮性はこの受容・伝達の過程に異常があることがわかっています。ジベレリンの他にブラシノライドというステロイド系の植物ホルモンも茎伸長成長に関与しており、ブラシノライドに関係する矮性も幾つか知られています。
栽培種の蔓なし品種は、突然変異で起きた矮性株を育種したものです。蔓なしの方が栽培に都合が良い場合もあります。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2021-07-19