一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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蓮の傾性運動について

質問者:   教員   まっつー
登録番号5143   登録日:2021-07-01
近所で蓮が咲く時期になりました。朝早くから咲き、昼には閉じるのを見かけます。チューリップとはちがい、熱による表皮の成長による開閉とは違うようです。以前の質問にあったような、ユウガオと同じ体内時計で花の開閉を行っているのでしょうか?教えていただけないでしょうか?
まっつー様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。
ハス(Nelumbo nucifera)の花の就眠運動は一般には光傾(傾光)性運動の例としてあげられています。しかし、ハスの花の開閉に関して実験を行って正確に観察解析した研究報告は見つけることができませんでした。これはおそらく、光や温度などの環境条件が調節できるような実験を、ハスを使って行うためには、かなり大規模な設備が必要となるからでしょう。
調べたところでは、すでにご覧になっておられるかもしれませんが、「大賀ハス(縄文ハス)の花の開閉について」という題で「福井市自然史博物館研究報告46:117- 126(1999)」に、自然状態での大賀ハスの開花運動を克明に観察した記録が報告されています。著者(加藤文男)によると、観察からは温度変化も光の刺激もハスの花の開閉との関係は明確にはできなかったが、どちらも直接的な要因とは考え難く、内生リズムの可能性もありうるので検討が必要だと結論しています。
植物(生物)は様々な周期性運動や変化の現象を示すが、多くは内生リズムが関与していることがわかっており、分子レベルでもそのメカニズムが明らかにされています。ハスの花の場合もその可能性は十分あると思いますが、ちゃんとした実験条件下で調べてみないと正しいことは言えません。
上記報告はwebsiteで読むことができます。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2021-07-16
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