一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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クチクラ層及び野菜表面について

質問者:   高校生   ともくん
登録番号5147   登録日:2021-07-03
◆クチクラ層は、植物地上部の表皮細胞の外側表面に組み込まれた複雑な疎水性の層だと教わりました。  

野菜でいうと

果菜類、葉菜類、茎菜類の表面はクチクラ層、その下がセルロースなどから成る表皮細胞(果菜類の外果皮表面にクチクラ層がある)

根菜類にはクチクラ層はなく、根菜類の表面(皮)はセルロースから成る細胞壁?
の理解であっていますか?
(例えば、ごぼうの皮と中の部分は、色やテクスチャが異なります。何故違うのですか?構成しているものが異なるのですか?)

さらに質問です。

野菜を放置しておくとクチクラ層は、脂質なので酸化する可能性がありますか?

収穫した野菜は死んだ細胞ですか?


親の影響で、庭いじりが好きです。大学は農学部に進学しようか迷っています。
テイツザイガー植物生理学の本
ともくん さん

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
連続した2つのご質問(登録番号5147, 5148)は関連していますので、まとめてお答えします。
学校で教えられたように「クチクラ層は、植物地上部の表皮細胞の外側表面に組み込まれた複雑な疎水性の層」です。地上部のもっとも外側にある細胞層は表皮です。クチクラ層は表皮細胞から分泌された材料によって細胞壁の外側に形成されます(登録番号4717, 1969参照)。2つ目にあげられた根菜類は殆どが地下部です。細い根を例に挙げると、根がつくられた当初は表皮があり、地上部と同じで、薄いながらもクチクラ層がありますが、根が地中で生長するときに土壌との摩擦で最外層の表皮はけずられてなくなり、表皮の直下にあった周皮と言う細胞層が現れます。
周皮は表皮が傷害を受けるとスベリンという蝋物質をつくり微生物などの侵入を防ぎます。スベリンはコルク質の主要な成分で、地上部に出来るクチクラと同じ役割を果たします。ダイコンやカブのように肥大した場合、表皮の殆どは残りますが地中にあるため水の損失を防ぐ必要がなくクチクラ合成にエネルギーを使う生態的意味がないかも知れません。したがってクチクラ層の形成が悪く薄い膜程度です。しかし、植物は傷を受けると傷口から微生物の侵入を防ぐためいろいろな反応をします。例えばジャガイモは地下の茎が膨らんだものですが、ポテトチップスを作るときのように薄切りにしておくと、髄組織(柔細胞)が露出します。傷害刺激によって傷口全面がスベリンで覆われます。またサツマイモ(塊根)では露出した柔細胞の細胞壁にリグニンを生成沈着させます。このように傷害でつくられる保護物質は植物種によって違います。
ゴボウが黒くなる点に疑問をお持ちですが、ゴボウにはポリフェノール物質が大量に含まれています。ゴボウを傷つけると細胞が破壊され含まれていたポリフェノールとポリフェノール酸化酵素が混ざり合い、ポリフェノールが酸化重合したり酸化物がほかの成分例えばアミノ酸などと反応、重合をしたりして黒褐色の物質を形成します。
クチクラ層を作る物質クチンは確かに脂質に属する物質ですが、脂肪酸や水酸化脂肪酸(脂肪アルコール)が複雑に重合した高分子ポリエステルですから、遊離の不飽和脂肪酸に見られる酸化はおきません。
「収穫した野菜は死んだ細胞ですか?」については登録番号0932, 3599をまずご覧下さい。
「収穫した野菜」には葉も茎もついていますね。根菜類の多くは肥大した茎、根を食用にしますが、ときには緑色の葉、茎が一部ついている場合もあります。つまり「収穫した野菜」多細胞で殆どの細胞は生きています。蔬菜類の一部の細胞が死ねばその部分は変色したり、萎れたりします。そのような蔬菜類は一般には食用にしません。
果皮のクチクラ層に関しても、これまでの説明と同じです。「果物(汁液を多く含んだ果皮をもつ果実)」は植物学的にはいろいろな部分をもっていますが、典型的なものは雌しべの基部にある子房が膨らんだものでその中に種子をつくります。したがって、中心から種子、種皮、内果皮、中果皮、外果皮から構成されています。一番外側の外果皮の最外層は表皮でその外側にクチクラ層があります。
調べ物をするときには中学生以上を対象とした教科書、図鑑、参考書などを利用したほうが良いかも知れません。
今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2021-07-30
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