Runa　様

この質問コーナーをご利用いただきありがとうございます。

ウォーキングパームの場合は際立った一例ですが、植物の根は一般に非常に動的なシステムであるようです。根の伸長は細胞の分裂と伸長によって引き起こされますが、この際には細胞を構成する物質が合成されるとともに外囲土壌を押しひろげて空間を確保する仕事がなされることになり、これらの過程でエネルギーが消費されます。消費されるエネルギーの源は言うまでもなく地上部から送られてくる光合成産物です（このため、根におけるエネルギー消費の効率は地上部の生長に大きな影響を与えます）。

ご質問では根を１㎝程度伸ばすのにどれくらいのエネルギーが必要であるかと問われていますが、必要なエネルギー量は植物の種類や根を取りまく外囲環境によって大きく異なって来ると思われ、一言でお答えすることが（私には）できません。根の伸長に伴うエネルギー消費量を見積もるには、根の呼吸によって放出される二酸化炭素の量や熱量、合成される有機物の量など、いくつかの手掛かりがあるかと思います。ここでは関連する最近の論文を紹介することで回答に代えさせたいただきます。

（文献）
T. Colombi, A.-M. Herrmann, P. Vallenback, and T. Keller (2019) Cortical cell diameter is key to energy costs of root growth in wheat. Plant Physiol. 180: 2049-2960（なお、 A.-M. Herrman and T. Colombi (2019) Energy use efficiency of root growth – a theoretical bioenergetics framework. Plant Signaling & Behavior 14 (no. 12): e1685147も参照）。