一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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原形質流動

質問者:   高校生   かに
登録番号5162   登録日:2021-07-22
「オオカナダモの葉の細胞では細胞小器官が流れるように動く原形質流動が見られる」
とありますが、動物細胞では原形質流動は見られないのですか。
かに様

みんなのひろば 植物Q&Aへようこそ。
質問を歓迎します。
回答は、細胞生物学の研究が専門の富永基樹博士(早稲田大学教育・総合化学学術院、准教授)にお願いしました。

【富永先生の回答】
原形質流動は、オオカナダモだけでなく様々な植物の細胞内で観察することができます。植物の原形質流動は、細胞小器官に結合したミオシンというモータータンパク質が、細胞骨格タンパク質の一種であるアクチン繊維の上を一定方向に運動する事で発生しています。
原形質流動の言葉の定義は「細胞質と呼ばれる細胞を満たしている液体が細胞内で流れる現象」となります。一般的な動物細胞を顕微鏡で観察しても、植物細胞で観察されるような細胞質のダイナミックな流れは見られません。ただ、ウニの卵やショウジョウバエの卵母細胞といった特殊な細胞では、細胞質の活発な流れが観察され、原形質流動と呼ばれています。しかしながら、この原形質流動の発生には、アクチン繊維やミオシンとは違う種類のタンパク質が関与しています。これらの細胞では、微小管という細胞骨格タンパク質の上を、キネシンというモータータンパク質が運動することによって原形質流動が発生していることが知られています。
動物と植物どちらにも、細胞骨格であるアクチン繊維と微小管、その上を運動するミオシンとキネシンは存在するのですが、それぞれの使われ方が異なるのが特徴的です。
富永 基樹(早稲田大学教育・総合化学学術院)
JSPPサイエンスアドバイザー
櫻井 英博
回答日:2021-08-23