一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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シロタエギクの花粉

質問者:   小学生   石井
登録番号5169   登録日:2021-07-27
顕微鏡で色々な植物の花粉を観ていたらシロタエギクから取った花粉だけ沢山の管が絡まった物が見えた。先端の方には沢山の丸い粒がついていて、管は絡まった後に太い幹の様になっている部分もあった。
これは何ですか?花粉管がこの様な状態になる事もあるのですか?
石井君

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。回答がおそくなってしまいごめんなさい。回答は名古屋大学大学院理学研究科生殖分子情報学の研究室の金岡雅浩先生に書いて頂きました。

【金岡先生の回答】
植物の花粉は種類によって形や模様が違うので、いろいろ見比べてみるととても楽しいですね。

さて、ご質問のシロタエギクについてです。私も自分で観察してみようと植物を探しましたが、花の咲く時期が6月〜7月ごろなので今の時期(8月下旬)では咲いている花を見つけることができませんでした。ですから、観察された時の植物の状態が分からないので、想像での返答になることをお許しください。

シロタエギクの花粉はどのような状態で観察されましたか?花からおしべを取ってきて、葯(ヤク)に着いている花粉を観察されたのでしょうか。それとも、葯を寒天培地に押しつけたり、水で洗ったりして、花粉を取り出して観察されたのでしょうか。花粉は水を吸うと花粉管が発芽することがあります。花粉を水に浮かべたり培地に乗せたりしたのであれば、花粉管が発芽した可能性もあります。乾いた状態の花粉では通常花粉管の発芽は起こりません。花粉の周りに管のような物がたくさん見えたとのことですが、花粉が吸水していないのであれば花粉管ではない他の物の可能性が高いでしょう。

ツツジやマツヨイグサでは、粘着糸(ネンチャクシ)というねばねばした糸が花粉の周りに見られます。顕微鏡で観察すると糸が花粉の周りに絡みついているように見えたり、花粉を葯から取ろうとするとまるで納豆が糸を引くように花粉がつながって採れてきたりします。これは、花粉を雌しべへと運んでくれる昆虫の体に、花粉がくっつきやすいように、植物が進化させた工夫です。ただし、調べた限りではシロタエギクの花粉でこのような粘着糸が見られるという記載はなかったので、今回観察された物はこれとは違いそうです。

他には、カビの菌糸(キンシ)を観察した可能性もあります。野外で取ってきた植物を観察していると、葯や雌しべの先端にカビが繁殖していることがあります。菌糸はたくさんの細胞からできていますので、よく観察するとブロックのように細胞がつながっているのが見えることがあります。また枝分かれをして広がるのも花粉管にはない特徴です。「管は絡まった後に太い幹の様になっている部分もあった」とのことですので、もしかしたらその幹の部分が菌糸の中心で、そこから枝分かれして広がっていたのかもしれません。

くり返しになりますが、実際に観察された様子を拝見していないので、見当違いの返答をしていましたら申し訳ありません。
金岡 雅浩(名古屋大学大学院理学研究科生殖分子情報学)
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2021-08-25
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