一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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アロエの蒸散について

質問者:   中学生   アキユキ
登録番号5190   登録日:2021-08-09
こんにちは。
中1の夏休みの自由研究でアロエの蒸散量の変化を調べています。実験結果が当初仮説を立てていた結果と異なった為、原因を考えています。


・実験内容
アロエにビニル袋をかぶせて、日中(7時~19時まで)と夜間(19時~翌7時まで)の2回で、天気、温度、湿度を確認し、蒸散量を計測しました。


・仮説
乾燥に強い多肉植物のアロエは、夜間に気孔が開き昼間は気孔を閉じて水分の損失を防ぐ特徴があるので、夜間に蒸散量が多いのではないかと思っていましたが、結果昼間の蒸散量のほうが多く、夜間の蒸散量はほとんどありませんでした。

どんな要因が考えられるのか、教えてください。
よろしくお願いします。
アキユキ君

みんなのひろば 植物Q&Aへようこそ。
質問を歓迎します。
質問の内容から判断して、アキユキ君は、光合成についてよく考え、相当高い知識をもっていることがわかりますが、一応説明します。
光合成生物は、空気中からCO2を取り入れ、太陽光のエネルギーを使って、有機物を合成します。CO2の同化の経路から、陸上植物は、C3型(イネ、コムギなど)、C4型(サトウキビ、トウモロコシなど)、CAM型(ベンケイソウ、サボテン)などに分けられます。CAM型光合成植物は、夜に気孔を開いてCO2を取り入れて、これをリンゴ酸などの有機酸として液胞中に蓄え、昼は気孔を閉じて液胞中の有機酸を分解してCO2を放出し、これを太陽光のエネルギーを使って通常の光合成により(C3植物などと同じ経路で)、糖類などの有機物に合成します。空気中のCO2を取り入れるためには気孔を開かなければなりませんが、そうすると水が蒸散によって空気中に失われてしまいます。砂漠などの乾燥地帯に生きる植物にとって水を失うことは枯れ死に直結します。CO2は必要だ、しかし水は失いたくないというジレンマを解決するために、CAM型光合成が進化してきたと考えられます。植物の系統進化の観点からみると、CAM型光合成は非常に多くの系統の植物から散発的かつ独立的に進化してきたと考えられ、気孔の開閉の日周期や湿度に対する応答にもいろいろなパターンがあることが知られています。
湿度の高低にかかわらず昼には気孔を閉じているものもありますが(サボテンの一部など)、湿度が高い時には昼間も気孔を開いてCO2を通常の(C3型の)光合成同化経路により、有機物に同化しているものもあります。アロエやパイナップルは、後者のグループに属します。
 アキユキ君の実験で使ったアロエは、空気中の相対湿度が高い条件では、イネやコムギと同様に、CO2を取り込むために昼間も気孔を開き、光合成炭素同化系によって有機物を合成していた、したがって気孔からの蒸散量も昼の方が大きかったと考えられます。
砂漠の気候をイメージし、アロエの鉢を入れたビニール袋の中に適当量の乾燥材を入れて相対湿度を低くし、気温は昼が高く、夜は低く、また、夜はビニール袋の口を開いてやれば、アロエも次第にCAM型光合成をするようになるかもしれません。
鉢の中の土の水分量も問題になりますが、どのようにしたらいいか思いつかないので、とりあえずやってみることにしましょう。また、CAM型になるのにどのくらいの期間が必要かは、わかりませんが。
櫻井 英博(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2021-08-19
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