一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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トマトの湯むきについて

質問者:   中学生   じゅんぺい
登録番号5191   登録日:2021-08-09
湯むきをするとトマトの皮は簡単に剥けます。冷凍したトマトも水で洗うだけで皮が剥けます。温度差によって皮と身の間になにか変化が起きるようですが、具体的にどのような変化が起きて皮が剥がれるのか教えて欲しいです。よろしくお願いします。
じゅんぺい様

植物Q&Aのコーナーを利用下さりありがとうございます。回答はトマトの高温障害について素晴らしい研究をされた岩堀修一先生にお願い致しました。

【岩堀先生の回答】
トマトの果実は真果ですので、果実は子房壁の肥大したものです。真果の組織は外果皮、中果皮、内果皮からできており、表皮とその下の数層の亜表皮は外果皮、その内部の可食部は中果皮由来です。
成熟果実では、表皮、亜表皮は伸びきっています。成熟果実の果肉部分(中果皮)ではペクチナーゼ、ヘミセルラーゼ、セルラーゼなどの働きで細胞間の結合が弱くなり、果肉は軟化しています。しかし、表皮、亜表皮の細胞ではこのような変化は見られず、細胞は完全性を保って固く結合しています。 
熱湯に入れることにより、わずかな果肉部分での体積変化やペクチン質のいっそうの可溶化によって亜表皮と果肉の間に亀裂を生じます。したがって皮が剥け易くなります。長く熱湯につけると熱が果実の内部まで伝わるので、表皮、亜表皮より内部の、細胞間の結合がより弱い果肉の細胞の間に亀裂が生じます。したがって皮が剥けた時、皮(表皮、亜表皮)の内側に少し果肉が付着します。剥けた時のぬるぬるはペクチン質によるものだと思われます。
冷凍の場合は凍結で細胞が破壊され、常温に戻したときにペクチナーゼなどのペクチン分解酵素の働きで細胞間のペクチン質の可溶化が進み剥けやすくなります。
岩堀 修一(筑波大学名誉教授)
JSPPサイエンスアドバイザー
庄野 邦彦
回答日:2021-09-01