一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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ホウセンカがかれたわけ

質問者:   小学生   よっちゃん
登録番号5194   登録日:2021-08-11
7月19日に学校からホウセンカのはちを持ってかえりました。
そだて方の本を読んだら、さし木でふやせると書いていたのでやってみました。

7月21日からはちうえのホウセンカのえだを5本切って水にさし、ちがう場所においてかんさつしています。
あ…花あり、北がわ室内
い…花なし、北がわ室内
う…南の外においたら、1日でしおれてしまったので、次の日から北がわの外(うっすら日が当たる)にかえた。南の外においたことでくきがいたんでしまった。
え…はじめから北がわの外
お…南がわの室内(レースカーテンごしに日が当たる)

毎朝水かえをしてかんさつを、つづけました。

すると、あのホウセンカいがいは根が出てきました。

8/9
あ、う、えのホウセンカは葉が茶色くなってきました。
い、おの葉は茶色くはないけれど、はちうえのホウセンカの葉とくらべると、緑の色がうすく、葉っぱをさわってみるとがさがさで、うすっぺらいです。

そこでわからないことが出てきました。教えてください。

あ、う、えのホウセンカがかれて、い、おのホウセンカの葉が、はちうえのホウセンカの葉より葉っぱ元気が無くなったのはどうしてですか。
よっちゃん君

質問コーナーへようこそ。かんげいいたします。よっちゃんはこの実験で何を調べようとしたのですか。つまり、実験の目的です。たぶん、「ホウセンカをさし木でふやすにはどのようにすれば一番うまくできるか」ということを調べたかったのではないでしょうか。そして、読んだ本に書いてあるように、ホウセンカの枝を切り取って切り口を水につけておくと、切り口から根(*)が出てくるので、そうしたら土に移してやる。そこで、この根を出させてやるには切り取った枝をどんな条件に置いておけば一番いいかを調べたかった。
よっちゃんが調べた条件は1)家の外と内、2)家の北側と南側、3)花のあるなし、ですね。これを科学的な条件としてみて見ると、1)温度の違い、2)陽の光があたるかあたらないか、そして温度の違いも、3)枝が若いか(花ができていない)、成長が進んでいる(花ができている)、と言うことになります。
だから、よっちゃんが調べたかったのは、切り取った枝の茎の切口に根ができるのは「温度、光、材料(枝)の成長度」の違いでどんな影響を受けるかということだったと思います。そうだとすると、残念ながらこの実験の仕方ではちょっと問題があります。
まず、ホウセンカの枝は何か基準を決めて切り取ったのですか。このような条件の違いの影響を調べる時は、できるだけ同じ状態の材料を使うことが大事です。この場合は、枝は同じ長さ、同じ太さ、同じ枚数の葉、同じ成長度(茎の先端から何番目など)をそろえることです。もう一つ、それぞれの条件に一本だけの枝ではなく、複数の枝を使う事が大切です。ただの一本だけだと、たまたまそれが例外であったりすることがあります。また、せめて、温度計でホウセンカを置いた場所の温度を測って記録しておくと良かったですね。
さて、ここまで読んでよっちゃんはがっかりしたかもしれませんね。そこで、よっちゃんの質問に書いてあることだけから、「あ、う、えのホウセンカがかれて、い、おのホウセンカの葉が、はちうえのホウセンカの葉より葉っぱ元気が無くなったのはどうしてですか。」というぎもんについて、その理由を考えてみましょう。だだしこれはあくまでも想像です。
 
まず、実験は7月21日から8月9日まで、つまり20日かかった。その間植物は肥料もなく水だけ与えられた。ふつう切り花を花びんに入れて水だけあたえておれば、20日もたてば枯れてしまいますよね。切り取った植物に水だけ与えて、どれだけ長く生きているかは、その切り取った植物が身体の中(茎や葉)にどれだけ多く栄養分を蓄えているかということと、もし緑の葉がついていて十分な光が当たっていれば、葉の中で「光合成(こうごうせい**)という働きで空気中の二酸化炭素(炭酸ガス)と下から吸い上げた水とから生きていくために必要な栄養を作ることができます。もちろん下からチッ素、リン、カルシウム、イオウ、マグネシウム、鉄、その他、の養分が与えられないと、結局枯れてしまいます。また、植物がちゃんと生きていくためにはそれぞれにかなった温度の範囲(はんい)に置かれることも必要です。
以上のことから考えてみると、「あ」は、花が咲いてるいるので、若い枝ではなかった。花をつけるためにはたくさんの栄養分を消費しなければならなかった。したがって切り枝にした時、からだの中に残っている栄養分は少なかった。また、北側なので十分な光もなく「光合成」も十分できなかった。だから新しく根をつくる力もなく、早く枯れた。「う」は、南側の戸外に置いたので、陽の光が強く水の温度が上がりすぎたか、あるいは茎の切り口から十分に水が吸い上げられなかったか、あるいはその両方でしおれてしまった。また、根を作ったためたくさんの栄養分を使い、体力を使い果たしてしまった。「え」は、北側の戸外だったため、葉は十分な光合成もできず、残っていた栄養分を使いつくして枯れてしまった。「い」と「お」はいずれも室内だったので、たとえ北側でも電灯などにより、戸外の北側よりは光があった。あるいは温度条件も良かったのかもしれない。だから、「あ、う、え」のように早く枯れなかったが、もうやがて枯れる寸前までになっていた。
もちろん以上は想像ですから違った理由があるかもしれません。いずれにしろ質問の内容だけからは、まちがいのない理由をみちびきだすことはできません。

(*)この根は種子をまいて出てくる根と違って、「不定根(ふていこん)」と言います。google で「Q&Aコーナーみんなのひろば不定根」と入れて調べて下さい。
(**)光合成については6年生になったら学校で習います。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2021-09-08