一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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白とピンクのハイビスカス

質問者:   会社員   沖人
登録番号5196   登録日:2021-08-13
今日は。庭で白いハイビスカスを育ていますが、最近一つの枝から白い花とピンクの花が咲くようになりました。何故そういう事が起きるのか教えて貰えませんか? 宜しくお願いします。
沖人樣

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。お宅で育てておられるハイビスカスの樹齢とか、もともとどのようにして苗木が作られたか(例えば、挿し木、接木、種子発芽など)がわからないと、その特定の個体についての原因を推し量る事は難しいですが、ごく一般的に起きうる可能性を挙げておきます。同一の個体で色の違った花が咲くことは「咲き分け」と呼ばれる現象で園芸品種には沢山あります。その中で紅白の花を咲き分ける場合は「源平咲き」と呼んでいます。源氏の白旗、平家の赤旗に因んだ呼称です。ウメ、モモ、ツバキ、ツツジ、サツキ、ボケなどや草本にもあります。ハイビスカスにあるかどうか調べてみましたが、ご質問のように白花の木に赤花がついたという例は、1つだけそれを紹介している項目がWEB上にありました。同じ仲間のムクゲでは見つかりませんでした。ふつう咲き分けが起きる場合は、色着きの花があってその中で白花が出現することが多いです。それはその花ができ始める最初の細胞で色素の合成に関わる遺伝子に異常が生じたため白花になってしまったわけです。この異常はもちろん自然の突然変異でも起きうる可能性は0ではありませんが、一般にトランスポゾン(Q&Aコーナー「トランスポゾン」で検索してください)という動く遺伝子が入り込み、一連の色素合成反応のどこかを触媒する酵素を作る遺伝子に混じってしまい、その働きを止めてしまう事によって起こります。これは動く遺伝子ですから、ある時そこから抜け出してしまえばまた元に戻ることも可能です。しかし、沖人さんのハイビスカスは初め白花でしたから、トランスポゾンが入ったために赤花ができたことは考えられません。従って、もしかするとその白花のハイビスカスの木はもともと赤花の木であったが、トランスポゾンにより白花が出来たため、それを増やしてできたものではないかと思います。つまり、もともと赤い色素を合成する反応経路が備わっているが、トランスポゾンのため作動できなくなっている状態ではないでしょうか。だから、ある時どれかの花ができるタイミングでトランスポゾンが引越しをしたため、その経路が作動を再開し、もともとの色が作られたのでしょう。因みにハイビスカスの赤色素はアントシアニン系もので、日本では承認された食品添加物色素だそうです。


勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2021-08-31