一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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自然下でのユリの上根について

質問者:   会社員   T
登録番号5205   登録日:2021-08-21
ユリは基本的には上根をしっかり張れるよう、深めに植えることが推奨されていますが、そこで疑問が生じました。

野生のユリには上根が生えているのでしょうか。

分球した株はともかく、種で増えた株は浅い位置に落ちる種が発芽するため、上根が張れる深さがないように感じます。
数年で土の深さが変わることもないでしょうし、種から増えた株は上根を生やさず下根のみで生育するのでしょうか。
T 様

植物Q&Aのコーナーを利用下さりありがとうございます。

 ヤマユリの球根(鱗茎)を植え付けますと、春先に鱗茎の下方から根が生じ(下根)、茎が伸び出します。やがて、その茎の下方(鱗茎のすぐ上)に不定根が多数生じます(上根)。牧野日本植物図鑑のヤマユリのところを見ますと、説明はありませんが、図に上根、下根がきっちり描かれています。流石です。上根は水や養分の吸収や地上部を支える役割をします。上根が生じないと生長が悪く、花も小さいので、鱗茎は深めに植え付けることが推奨されています。上根の形成は野生のヤマユリでも見られます。
 次の質問は、野生の場合、種子から発芽した植物体では上根はどうなるかということかと思います。野生の場合は、一つの朔当たり数百の種子が散布されます。その中で幾つかが発芽、成育に適した場所で成育を続けらられば良いということになります。種子が土壌のすきまに入り込むこともあるでしょう。成育適地は水はけがよく、適当な湿度を保つ膨軟な肥沃の土壌が良いようですので、種子の上に枯草が堆積することもあるでしょう。花が咲くまで5年ほどかかるようですので、その間に土壌がかぶさることもあり得ます。さらに、ヤマユリの下根には一旦肥大したあと収縮する不定根があります(牽引根あるいは収縮根といいます)。牽引根は縮むことによって、芽生えの鱗茎が持ち上がるのを引き戻したり、地中深く引き下げる作用があります。牽引根はヤマユリの他、アヤメ、リンドウ、グラジオラスなどでも知られています。本コーナーの登録番号3070 にも解説がありますので、ご覧になって下さい。
庄野 邦彦(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2021-09-12
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