質問者:
自営業
YOKKO
登録番号5206
登録日:2021-08-22
生の大豆は楕円ですが、乾燥すると球になります。大豆の形状
どうしてですか。
インゲン、ソラマメなどは、そのままの形状で小さくなります。
YOKKOさん
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
枝豆は成熟した胚で含水量70~75%程度、やや扁平した回転楕円体状で、その後は乾燥過程に入り、含水量12~13%程度になるとほぼ球形の乾燥種子となります。
受精後胚の初期成長は主に細胞分裂による細胞数の増加によりますが、これが終わると細胞肥大(特に子葉細胞の)によってやや扁平した回転楕円体状の成熟種子の形状ができあがります。果実の乾燥が始まると種子細胞の収縮が始まりますが細胞壁、細胞膜は複雑な形状となり含水量12~13%程度になると種子はほぼ球形になるようです。この乾燥過程における種子内細胞の形態変化については多くありますが、その殆どは細胞膜、細胞内器官(プロテインボディ、リピッドボディ、ミトコンドリア、小胞体など)の消長、微細構造の変化の観察で、細胞単位での形状変化ははっきりしません。唯一、本学会の現広報委員長相田光宏教授(熊本大学国際先端科学技術研究機構)が挙げられた武庫川女子大学の研究者達による豆類の吸水に関する研究が成熟種子と乾燥種子の形状変化を調べたものだけでした。それらによると、まず、成熟種子についてへそを前面に向け2枚の子葉が合わさっている面を垂直に置いたときの最大横幅を「厚さT」、高さを「長さL」、へそ側とその反対側までの最大の長さを「幅W」とし、乾燥ダイズの1枚の子葉から各軸方向を保って切り出した立方体切片からさらにT-W面に平行に切った横断面切片、T-L面に平行に切った縦断面I切片、L-W面に平行に切った縦断面II切片の3種薄片に徐々に水を与えて給水後の薄片のL方向、W方向、T方向の伸長を測定すると、伸長率(吸水時の長さ/乾燥時の長さ)は、L方向が1.77~1.88、W方向が1.25~1.27、T方向が1.12~1.23となり、L方向がW方向、T方向よりも大きかった。この過程での細胞レベルでの形態変化の顕微鏡像から子葉細胞自体が完全吸水時にはL方向に長い楕円体で乾燥時には細胞壁、細胞膜が複雑な襞状に折れ曲がっている。吸水によりこれら襞が伸ばされるので種子形状も球状から楕円体状に復旧する、と推定しています。
したがって、成熟ダイズの子葉細胞は楕円体である、乾燥にともなって楕円体長軸方向の褶曲率が他方向の褶曲率よりも大きいために、子葉全体が球形に近づく、と言うことになります。
現段階でこのような乾燥時の変化がダイズに特有である理由は分かりません。もっともダイズでも品種によっては乾燥時に球状にならないものもあるようです。
立体的な検体採取、顕微鏡像などを文章だけで表現するのは非常に難しく、理解することも困難に思われます。原論文(日本語です)は以下のサイトでご覧になれますので、是非参照して下さい。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nskkk1995/47/8/47_8_626/_article/-char/ja/
豆類の吸水に関する次の論文もご参考までに。
豆類の吸水特性
https://mukogawa.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=396&item_no=1&page_id=28&block_id=33
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
枝豆は成熟した胚で含水量70~75%程度、やや扁平した回転楕円体状で、その後は乾燥過程に入り、含水量12~13%程度になるとほぼ球形の乾燥種子となります。
受精後胚の初期成長は主に細胞分裂による細胞数の増加によりますが、これが終わると細胞肥大(特に子葉細胞の)によってやや扁平した回転楕円体状の成熟種子の形状ができあがります。果実の乾燥が始まると種子細胞の収縮が始まりますが細胞壁、細胞膜は複雑な形状となり含水量12~13%程度になると種子はほぼ球形になるようです。この乾燥過程における種子内細胞の形態変化については多くありますが、その殆どは細胞膜、細胞内器官(プロテインボディ、リピッドボディ、ミトコンドリア、小胞体など)の消長、微細構造の変化の観察で、細胞単位での形状変化ははっきりしません。唯一、本学会の現広報委員長相田光宏教授(熊本大学国際先端科学技術研究機構)が挙げられた武庫川女子大学の研究者達による豆類の吸水に関する研究が成熟種子と乾燥種子の形状変化を調べたものだけでした。それらによると、まず、成熟種子についてへそを前面に向け2枚の子葉が合わさっている面を垂直に置いたときの最大横幅を「厚さT」、高さを「長さL」、へそ側とその反対側までの最大の長さを「幅W」とし、乾燥ダイズの1枚の子葉から各軸方向を保って切り出した立方体切片からさらにT-W面に平行に切った横断面切片、T-L面に平行に切った縦断面I切片、L-W面に平行に切った縦断面II切片の3種薄片に徐々に水を与えて給水後の薄片のL方向、W方向、T方向の伸長を測定すると、伸長率(吸水時の長さ/乾燥時の長さ)は、L方向が1.77~1.88、W方向が1.25~1.27、T方向が1.12~1.23となり、L方向がW方向、T方向よりも大きかった。この過程での細胞レベルでの形態変化の顕微鏡像から子葉細胞自体が完全吸水時にはL方向に長い楕円体で乾燥時には細胞壁、細胞膜が複雑な襞状に折れ曲がっている。吸水によりこれら襞が伸ばされるので種子形状も球状から楕円体状に復旧する、と推定しています。
したがって、成熟ダイズの子葉細胞は楕円体である、乾燥にともなって楕円体長軸方向の褶曲率が他方向の褶曲率よりも大きいために、子葉全体が球形に近づく、と言うことになります。
現段階でこのような乾燥時の変化がダイズに特有である理由は分かりません。もっともダイズでも品種によっては乾燥時に球状にならないものもあるようです。
立体的な検体採取、顕微鏡像などを文章だけで表現するのは非常に難しく、理解することも困難に思われます。原論文(日本語です)は以下のサイトでご覧になれますので、是非参照して下さい。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nskkk1995/47/8/47_8_626/_article/-char/ja/
豆類の吸水に関する次の論文もご参考までに。
豆類の吸水特性
https://mukogawa.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=396&item_no=1&page_id=28&block_id=33
今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2021-09-30