一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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受粉について

質問者:   高校生   りょうすけ
登録番号5221   登録日:2021-09-08
こんにちは
栗やアケビ類を植えるとき、一本では実がなりづらいということをよく聞くのですが、
たとえば、アケビだったら、ミツバアケビ×アケビで植えたとしたら、その二つの遺伝子で結び付いて出来た種を植えて、発芽して成長するのは、ミツバアケビとアケビが混じったどちらでもないものになってしまうということになるのでしょうか?
りょうすけ君

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。クリやアケビは同一株に雄花と雌花(雌雄異花)をつける雌雄同株の植物ですが、同一株の雄花/雌花同士では授粉/受粉はしません。このような植物は他にもたくさんあり、「自家不和合」と呼ばれています。アケビ/ミツバアケビの場合は雌しべの柱頭についた花粉は一応発芽して花粉管が花柱の中を伸長しますが、胚珠のところで止まってしまい受精ができないタイプで、後発型あるいは遅延型自家不和合と呼ばれています。
「自家不和合」については本コーナーでこれまでにいくつかの関連質問/回答がありますので、その説明はここでは省きます。(googleで「Q&Aコーナーみんなのひろば自家不和合」と検索して下さい。) 
日本のアケビ属の種類はアケビ(Akebia quinata Decne.)、ミツバアケビ(A. trifoliate (Thunb) Koidz.)と両者の自然雑種であるゴヨウアケビ(A. lobate Decne. var. pentaphylla Makino)があります。ゴヨウアケビが雑種であることは遺伝子解析によっても判明しています。アケビ、特にミツバアケビは食用果実のために栽培され、いくつかの品種が登録されています。アケビの自家不和合性はかなり高いようで、同一品種の他の個体(株)でもほとんど受粉は見られないようです。異なった品種間でも品種によっては比較的高い和合性が見られたり、あるいはほとんど見られなかったりとまちまちのです。しかし、別の種類の株の間では和合性があります。したがって、果実を採取する目的で栽培するのなら、異なる種のアケビを近接して植える事になります。育種が目的の時は交雑種の種子を採取する必要があるありますが、アケビは挿し木で増やせますので、ただ増殖のためならばそのほうが簡単です。アケビは三つの種類の間では受粉が可能なので、作られる種子胚は当然両親の遺伝子を受け継ぎます。その種子からは新しい色々なタイプの雑種が育つ可能性は高いでしょう。どちらかの親によく似た雑種が出現することもあるでしょう。現在栽培されているアケビはおそらくいろいろな品種の遺伝子が入り交じっていると思われます。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2021-09-23
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