質問者:
その他
渡辺 和彦
登録番号0523
登録日:2006-02-16
中学生に「植物に立小便をしたら、肥料になるからいいの?」って聞かれましたが、正確に答えることができませんでした。みんなのひろば
立小便は植物にいい?
いろいろ調べてはみたんですが、このような疑問にズバリ答えているものは見つかりません。
農業をしている知人は「直接かけたら枯れるよ」と教えてくれました。
じゃ、直接ではなく、離れたところにかけるならいいのか、それとも尿そのものが害を与えるのか・・・
有機物(尿)が細菌などによって分解して無機物になれば、良い肥料になるんでしょうけど・・・どうなんでしょうか、教えて下さい。
渡辺 和彦 様
なかなか面白い質問をする中学生ですね。良くないとは知りながらも立小便を何となくしてみたい年頃なのかも知れません。
第二次世界大戦の戦後まもなく化学肥料が安価に導入されるまで人糞尿は作物栽培の重要な肥料でした。直接畑に施肥したり、堆肥を作る際、積み上げた落ち葉、藁にかけたりもしました。窒素、リン酸、カリウムなど植物の三大栄養成分を含んでいて肥料として有効なものだからです。昔の便所では糞尿は堆積されますが、次第に微生物の働きで液化してきます。肥料にはこのように液化した人糞尿を用いました。畑には、肥溜(肥桶)があって糞尿を入れておき「熟成」させたものです。ですから今では信じられないかも知れませんが農村地帯では時期により「特有の匂い」があったものです。そのためか「立小便は肥料になる」ということが言われていましたし、それなりの科学的根拠もありますが、どうも昔の日本では普通に行われていた放尿を正当化する台詞のようにも思えます。
調べてみますと、人尿の主な成分は、尿素(約2%)、塩化ナトリウム(約0.6%)、硫酸イオン(約0.2%)、リン酸イオン(約0.12%)、カリウムイオン(約0.15%)で、この他尿酸、アンモニア、カルシウム、性ホルモン、ビタミン類などが微量含まれています。摂取した薬物は体内で代謝され代謝産物も尿内に排泄されます。オリンピック大会などで話題になるドーピング検査は尿に使用禁止薬物の代謝産物が含まれているかどうかを調べるものです。肥料として役に立つ成分としては尿素、リン酸、カリウムがあります。尿は土壌中に入りますので尿素は土壌微生物の働きでかなり速やかにアンモニアと二酸化炭素に分解され、アンモニアはそのままあるいは細菌の作用で硝酸となって植物に吸収されますので窒素肥料として有効と考えられます。尿素2%溶液は0.33Mに相当し、すべてアンモニアに分解されるとアンモニア濃度は0.87Mとなり、直接散布する液体肥料の最適濃度のほぼ10から20倍の高濃度になりますが、実際には1回の排尿量は200から250ml程度で土壌には散布されますので植物(作物)にとって有害とはならない濃度でしょう。成分から考えれば肥料となり得ますが、計画的に施肥を行う栽培農業において放尿が有効でないことは明白です。人糞尿を肥料にする場合には、計画的に時期を選び、作物根元から十分離れた場所に施肥して、植物に直接触れないように留意したものです。新鮮尿が茎葉に直接一度かかったくらいでは枯れることはないと思われます。しかしペットの排泄物ですら各自回収して処理することが求められている社会で「立小便」は慎むべき行為であることはいうまでもありません。
なかなか面白い質問をする中学生ですね。良くないとは知りながらも立小便を何となくしてみたい年頃なのかも知れません。
第二次世界大戦の戦後まもなく化学肥料が安価に導入されるまで人糞尿は作物栽培の重要な肥料でした。直接畑に施肥したり、堆肥を作る際、積み上げた落ち葉、藁にかけたりもしました。窒素、リン酸、カリウムなど植物の三大栄養成分を含んでいて肥料として有効なものだからです。昔の便所では糞尿は堆積されますが、次第に微生物の働きで液化してきます。肥料にはこのように液化した人糞尿を用いました。畑には、肥溜(肥桶)があって糞尿を入れておき「熟成」させたものです。ですから今では信じられないかも知れませんが農村地帯では時期により「特有の匂い」があったものです。そのためか「立小便は肥料になる」ということが言われていましたし、それなりの科学的根拠もありますが、どうも昔の日本では普通に行われていた放尿を正当化する台詞のようにも思えます。
調べてみますと、人尿の主な成分は、尿素(約2%)、塩化ナトリウム(約0.6%)、硫酸イオン(約0.2%)、リン酸イオン(約0.12%)、カリウムイオン(約0.15%)で、この他尿酸、アンモニア、カルシウム、性ホルモン、ビタミン類などが微量含まれています。摂取した薬物は体内で代謝され代謝産物も尿内に排泄されます。オリンピック大会などで話題になるドーピング検査は尿に使用禁止薬物の代謝産物が含まれているかどうかを調べるものです。肥料として役に立つ成分としては尿素、リン酸、カリウムがあります。尿は土壌中に入りますので尿素は土壌微生物の働きでかなり速やかにアンモニアと二酸化炭素に分解され、アンモニアはそのままあるいは細菌の作用で硝酸となって植物に吸収されますので窒素肥料として有効と考えられます。尿素2%溶液は0.33Mに相当し、すべてアンモニアに分解されるとアンモニア濃度は0.87Mとなり、直接散布する液体肥料の最適濃度のほぼ10から20倍の高濃度になりますが、実際には1回の排尿量は200から250ml程度で土壌には散布されますので植物(作物)にとって有害とはならない濃度でしょう。成分から考えれば肥料となり得ますが、計画的に施肥を行う栽培農業において放尿が有効でないことは明白です。人糞尿を肥料にする場合には、計画的に時期を選び、作物根元から十分離れた場所に施肥して、植物に直接触れないように留意したものです。新鮮尿が茎葉に直接一度かかったくらいでは枯れることはないと思われます。しかしペットの排泄物ですら各自回収して処理することが求められている社会で「立小便」は慎むべき行為であることはいうまでもありません。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2006-04-25
今関 英雅
回答日:2006-04-25