質問者:
一般
アサギマダラ
登録番号5245
登録日:2021-10-11
群馬県立榛名公園の草原でユウスゲの補植を検討しています。その理由は、ササの侵入によりユウスゲが減ってきているためです。みんなのひろば
ユウスゲの補植活動は、遺伝的多様性を減少させてしまうか。
方法は、ユウスゲの種を取って苗を育てる方法と分けつにより増えた株を草原に植える方法を考えています。この時、良かれと思って実施する一つの植物の保全活動がユウスゲの遺伝的多様性を減少させてしまっては、本末転倒になってしまうのでは心配をしています。以前、東北大学の廣田先生が、群馬県の榛名公園に来られてユウスゲの葉を採集し、その遺伝的多様性を確認されていました。その結果は、4種類位の多様性が確認できたので当面心配はないのではないかとの説明があり安心をしていました。
しかし、草原の乾性遷移は、地球温暖化などの影響もあってか、ササの侵入増殖のスピードが速まっているように感じています。管理をしている行政においても観光振興と自然保護・保全の両立を考えているため、ユウスゲが姿を消してしまうことには忍びなく思っています。もちろん、草原の中にレモンイエローの花が咲き続けてくれることは全県民の願いでもあります。
さらには、確か、一般財団自然環境財団の日光支部でも、霧降高原でニッコウキスゲの補植を行っています。連絡も取り合っているところです。そのように、他の所でも先行実践はあるのですが、基本的な考え方としてこうした取り組みの是非は、どのように考えればよいのかご指導ご助言を頂ければと思っています。
これまでは、ユウスゲと送粉者(ポリネーター)のスズメガとの受粉生態学的調査も実施し、結実率を継続調査してきています。しかし、これまでの結実率が26%であったものが20%へと大きく減少しています。ササの影響等をそのままにしてはおけないような現状が進行しています。ましてや、今回ノーベル物理学賞を取られた真鍋さんのコメントにもありますが、ユウスゲという植物は、あえて昼咲から夜咲きへと進化してきた植物であればこそ、ここで、しっかり正しい保護活動・保全活動を展開出来ることを真剣に考えています。
長い質問になってしまいました。ぜひ、明確なるご回答によるご示唆を頂けますよう宜しくお願いいたします。
サギマダラ樣
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。榛名高原のユウスゲの保全活動をされているとのこと、確かにササの勢力に負けてその個体数が減少していく心配はあります。他の草本たちも同じ運命を辿るかもませんね。私が初めて榛名山を訪れたのは今から70年以上も前のことですが、その時草原の中を歩き回ったことを懐かしく思い出しました。リンドウ(種類は覚えていない)、マツムシウソウ、フジバカマ、ワレモコウ、オミナエシ、ユウスゲもあったと思います。
榛名のユウスゲは遺伝的に4種類くらいのグループがあるということですが、これらは何か形態的な違いがあるのでしょうか、また、生育の分布は一応隔離しているのか、それとも混在しているのでしょうか。種子を採って繁殖/移植する場合は、どの個体から採種をするかで、もしかするとある遺伝的グループのものを偏って増やしていることもありうるでしょう。ユウスゲの仲間は自家受粉を行いますが、もし他家受粉もするとすれば、4種類のグループが混在しておればランダムな交雑も起きているはずです。4種類の多様性がどういうものかわかりませんが、ランダムな交雑が行われていれば、遺伝子のシャッフルが起きていますから遺伝子的多様性も大きいかもしれません。
形態的には区別できないとすれば、出来るだけ偏らない遺伝子集団のユウスゲを増やしたいのなら、広い区域からランダムに採種するといいかもしれません。なお、分蘖による繁殖はクローン個体を増やすことになりますから、そのことも考慮に入れた方が良いでしょう。
野生の植物を保護する目的で人為的に栽培して増やし、自然に戻すという方法はよく用いられますが、それがかえって自然の生態系への干渉にはならないかと言う問題もあります。難しい選択ですね。
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。榛名高原のユウスゲの保全活動をされているとのこと、確かにササの勢力に負けてその個体数が減少していく心配はあります。他の草本たちも同じ運命を辿るかもませんね。私が初めて榛名山を訪れたのは今から70年以上も前のことですが、その時草原の中を歩き回ったことを懐かしく思い出しました。リンドウ(種類は覚えていない)、マツムシウソウ、フジバカマ、ワレモコウ、オミナエシ、ユウスゲもあったと思います。
榛名のユウスゲは遺伝的に4種類くらいのグループがあるということですが、これらは何か形態的な違いがあるのでしょうか、また、生育の分布は一応隔離しているのか、それとも混在しているのでしょうか。種子を採って繁殖/移植する場合は、どの個体から採種をするかで、もしかするとある遺伝的グループのものを偏って増やしていることもありうるでしょう。ユウスゲの仲間は自家受粉を行いますが、もし他家受粉もするとすれば、4種類のグループが混在しておればランダムな交雑も起きているはずです。4種類の多様性がどういうものかわかりませんが、ランダムな交雑が行われていれば、遺伝子のシャッフルが起きていますから遺伝子的多様性も大きいかもしれません。
形態的には区別できないとすれば、出来るだけ偏らない遺伝子集団のユウスゲを増やしたいのなら、広い区域からランダムに採種するといいかもしれません。なお、分蘖による繁殖はクローン個体を増やすことになりますから、そのことも考慮に入れた方が良いでしょう。
野生の植物を保護する目的で人為的に栽培して増やし、自然に戻すという方法はよく用いられますが、それがかえって自然の生態系への干渉にはならないかと言う問題もあります。難しい選択ですね。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2021-11-18