質問者:
中学生
ゆい
登録番号5254
登録日:2021-10-19
植物は細胞の呼吸で必要な栄養を光合成で作りますが、みんなのひろば
光合成や呼吸で生じた気体を使い回さないのは何故ですか?
そのときに細胞の呼吸では酸素を吸って二酸化炭素を出し、光合成では二酸化炭素を吸って酸素を出すと習いました。
しかし、気体を外へ出してしまうのはもったいないのではないでしょうか?
光合成に二酸化炭素を使うのであれば、細胞の呼吸でできたものを使えば良いし、同じように細胞の呼吸に酸素を使うのであれば、光合成でできたものを使った方が、外界の状態に左右されないから生存率もあがるのではないでしょうか。
自分で作り出したものを使わずに、わざわざ新しいものを取り込んでいる理由を教えてください。
植物Q&Aへようこそ。質問を歓迎します。
この問題は、物質の収支を定量的に考えることが必要です。説明の都合上、光合成と呼吸の、CO2とO2の出入りを、まず、非常に大まかに考えてみましょう:
光合成:CO2 +H2O ―>(光エネルギー、葉緑体) 有機物+O2
呼吸:有機物+O2 ―> (ミトコンドリアなど) CO2 +H2O
光合成でできた有機物は、植物の成長などに絶対に必要です。もし、光合成で作られた有機物を呼吸で全部使ってしまったら、植物は成長できません。確かに、夜には呼吸によって有機物を分解してCO2を排出しますが、植物の生長、生存(次世代の植物を残す)のためには光合成によって蓄積される有機物の方が、呼吸によって失われる有機物よりも量的に大きくなければなりません。また、一般の植物は呼吸によって排出されたCO2をため込むような組織も持っていません。昼間、光合成によって放出されO2を夜間の他呼吸のために一時的に保存しておくような組織も持っていません。陸上植物では、呼吸に必要なO2は、周辺の環境に十分ありますのでため込む必要はありません。
植物は成長のために、外界からCO2を取り入れて、光合成によって有機物に合成し、発生したO2を捨て去ることが必要です。なお、O2は光合成をはじめとする細胞の働きにとって酸素呼吸を助けますが、有害な作用をもっているという一面もあり、植物は酸素の害作用に対する防御機構をそなえています。ヒトは呼吸にO2を必要としますが、胎児は母体の中ではO2濃度が比較的低い環境下に置かれており、もし、未熟児として外科的手術によって出産予定日よりも早く取り出した場合は、しばらくの間、O2濃度の低い保育箱の中で育てないと、網膜の血管が異常に増殖した未熟児網膜症を引き起こす危険性が指摘されています。
なお、サボテンなどの多肉植物(CAM型光合成植物とよばれる)の一部は、乾燥した環境に適応するために、夜間に気孔を開いてCO2をリンゴ酸などの有機酸に一時的に蓄え、昼間にこれを分解してCO2を放出して光合成によって有機物に合成するという方式をとっています。(植物Q&A で、「CAM」を検索語として調べ、登録番号1341をご覧ください)。呼吸によって生じたCO2は光合成に再用することはできますが、この場合にも、正味の成長には外部から取り入れたCO2が必要だということになります。
この問題は、物質の収支を定量的に考えることが必要です。説明の都合上、光合成と呼吸の、CO2とO2の出入りを、まず、非常に大まかに考えてみましょう:
光合成:CO2 +H2O ―>(光エネルギー、葉緑体) 有機物+O2
呼吸:有機物+O2 ―> (ミトコンドリアなど) CO2 +H2O
光合成でできた有機物は、植物の成長などに絶対に必要です。もし、光合成で作られた有機物を呼吸で全部使ってしまったら、植物は成長できません。確かに、夜には呼吸によって有機物を分解してCO2を排出しますが、植物の生長、生存(次世代の植物を残す)のためには光合成によって蓄積される有機物の方が、呼吸によって失われる有機物よりも量的に大きくなければなりません。また、一般の植物は呼吸によって排出されたCO2をため込むような組織も持っていません。昼間、光合成によって放出されO2を夜間の他呼吸のために一時的に保存しておくような組織も持っていません。陸上植物では、呼吸に必要なO2は、周辺の環境に十分ありますのでため込む必要はありません。
植物は成長のために、外界からCO2を取り入れて、光合成によって有機物に合成し、発生したO2を捨て去ることが必要です。なお、O2は光合成をはじめとする細胞の働きにとって酸素呼吸を助けますが、有害な作用をもっているという一面もあり、植物は酸素の害作用に対する防御機構をそなえています。ヒトは呼吸にO2を必要としますが、胎児は母体の中ではO2濃度が比較的低い環境下に置かれており、もし、未熟児として外科的手術によって出産予定日よりも早く取り出した場合は、しばらくの間、O2濃度の低い保育箱の中で育てないと、網膜の血管が異常に増殖した未熟児網膜症を引き起こす危険性が指摘されています。
なお、サボテンなどの多肉植物(CAM型光合成植物とよばれる)の一部は、乾燥した環境に適応するために、夜間に気孔を開いてCO2をリンゴ酸などの有機酸に一時的に蓄え、昼間にこれを分解してCO2を放出して光合成によって有機物に合成するという方式をとっています。(植物Q&A で、「CAM」を検索語として調べ、登録番号1341をご覧ください)。呼吸によって生じたCO2は光合成に再用することはできますが、この場合にも、正味の成長には外部から取り入れたCO2が必要だということになります。
櫻井 英博(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2021-12-27