一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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植物の環境ストレスと生物ストレスについて

質問者:   高校生   こうたろう
登録番号5283   登録日:2021-11-20
こんにちは。農学部を志望している高校2年生です。植物について調べていた際に疑問に思ったことを質問したいです。
植物は私たち人間と同じように様々なストレスにさらされて、環境に適応するようですが、そのストレス源は環境的なストレス(非生物的なストレス)と生物的なストレスに大きく分けられると知りました。
例えば、環境ストレスでは温度や光、塩濃度、乾燥などがストレス源に、生物ストレスでは病原性の微生物や寄生生物がストレス源になるそうです。そこで、ふと疑問に思ったのですが、植物が複数のストレスを受けた際(例えば、温度と乾燥、温度と病原体など)、どちらも対応するのか、優先順位があるのか疑問に思いました。もし仮に、複数のストレス全てに適応していたら、容量オーバーになってしまいそうな気がします。
回答お願いします。
こうたろう様
 
 こんにちは。日本植物生理学会の植物Q&Aコーナーに寄せられたあなたのご質問「植物の環境ストレスと生物ストレスについて」にお答えします。
 
 以前アメリカで、植物にストレスがあるなどと妙なことを言うものには研究予算はつけないと政府が言ったことから植物学者たちが大慌てしたことがありました。今でも、一般にストレスと言えば人が感じる精神的な圧迫と思うのが普通だろうと思います。しかし、植物のストレス応答は植物学の中でも重要で盛んな研究分野の一つになっています。
 
 植物におけるストレスの定義は案外曖昧なのですが、ごく簡単に言えば、植物の生育にとって不利な状況がストレスということになるかもしれません。つまり、植物はストレスに遭遇すればダメージを受けるものなのです。ですから、必ずしも常に「環境に適応」できるわけではなく、「容量オーバーになって」適応できずに死に至ることも当然あります。そのようなダメージを避ける、あるいは軽減する仕組みを獲得してきたのが植物に特徴的で、また、そのような仕組みを強化したストレス耐性植物を育成することが農業上重要なことから、ストレスに関する話題では「植物は環境に適応している」という面が強調されるのでしょう。
 
 自然界では植物は複数のストレスを受けるのが普通です。例えば、強い日照りの下では強光、高温、乾燥、高塩濃度などに同時にさらされますが、これらはどれも植物の生育にとって不利な要因なのでストレス要因となりうるものです。それぞれが単独でもストレス要因となりますが、強光に反応したときは高温には反応しないというような「優先順位」のようなものはありません。個々のストレス要因による効果が相加作用として現れることになります。ただし、温度の影響が光強度に依存して相乗作用を示すような場合もあります。しかし、一つの実験では一つの要因を変化させるのが普通で、複数の要因を同時に変化させると結果の解釈が複雑になるため、複数のストレス要因の間の相互作用はまだよくわかっていません。
竹能 清俊(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2022-02-10
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