一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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植物が生きているか確認できる機械はあるか?

質問者:   一般   ねなしぐさ
登録番号5289   登録日:2021-11-28
私は多肉植物が好きで、輸入した植物を買うことがあります。
輸入される植物は根っこを切られた状態で輸送されてきます。
この輸送時間が長いと植物の体力が消耗されて土に植えてもそのまま枯れる個体があります。

現地で抜かれてからどれくらい経過している植物なのか分からないので、鮮度が外から見ても分かりません。

そこで、
植物が生きているか、鮮度がいいかを数字で確認できる機械のようなものはありますか?
例えば水分量を測定すれば分かるなど、方法があれば知りたいです。
植物が生きているか確認する方法を知りたいです。
ねなしぐさ 様

この質問コーナーをご利用いただきありがとうございます。

多肉植物などの緑色をした植物(体)が生きているかどうかを確認するには、組織体のどの程度の部分が生きた細胞で構成されているかを調べる必要があります。その際には、生命活動に必要なエネルギーを獲得する過程である光合成の機能を保持しているかどうかや、細胞の機能に不可欠な水分を適当に含んでいるかどうかなどについての情報が鍵となります。光合成の機能を鋭敏に反映するのはクロロフィルの存在状態で、その状態変化(クロロフィルの変性・分解などを含む)は一般には植物体の外観上の色彩の違い(変色)となって現れます。また、植物体の萎れや乾きなどとなって先ずは欠乏が現れる水分含量の変化も重要な目安になります。ご質問で問題とされている「見かけの鮮度」には水分含量の視点が大きく関係してくるのではないでしょうか。

ところで、色彩の測定に関しては、例えば果物の選別に使われるリモートセンシングのようなやり方の工夫で、植物体に傷をつけることなく表面の光合成の能力を大まかに見積もる装置を作ることは可能です。水分含量の測定に関してはいろいろな目的に合わせた水分量計が市販されているように見受けられます。ただし、種の違いや生育段階の違いなどによって植物の状態は大きく異なってくるので、個々の植物の鮮度や光合成の能力を数値化して比較することをゴールと考えるのであれば、それぞれの場合に適した機械を工夫をして開発して行く必要があると思います。植物が生きているかどうかを簡単に確認できる簡便な機械はないのではないかと思います。ただし、大気圏から地球における光合成生産やバイオマス蓄積量を見積もる試みが行われていることには言及させていただきます。

落葉した樹木の地上部は一見して枯木と区別できない場合がありますが、少し樹皮の表面を削って内層を見ると、色彩と水分含量から生きている組織であるのに気づかされことがあります。定量的ではなくまた破壊的な方法ではありますが、多肉植物の一部に傷つけて断面を観察することで鮮度についての情報が得られるのではないでしょうか。
佐藤 公行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2022-02-08
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