一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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常緑樹の紅葉

質問者:   公務員   しんら
登録番号5294   登録日:2021-12-04
落葉樹は少なくない種類が紅葉・黄葉します。一方常緑樹が紅葉するのは今年初めて知りました。今まで寒い地方に長く住んでいたり、紅葉・黄葉の時期に暖かい地方にいる期間が少なかったせいもあります。
葉が紅葉・黄葉するのは落葉と非常に関係あるようなのですが、
常緑樹で一部の樹種(サンゴジュ・モッコクくらいしか知りません)が紅葉するのはなぜなのでしょうか。
しんら様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。
常緑樹は英語でも evergreen plants 呼ばれるように、葉が一年中緑色をしている樹のことをそう呼んでいます。広葉樹にも針葉樹にもあります。しかし、寒い地方では常緑広葉樹は見られません。他方、落葉樹は葉の寿命が半年程度と短く、ふつう秋〜冬にかけて全部の葉が緑色を失い、枯れて落葉してしまいます。多くは黄色〜赤色に色づき、いわゆる紅葉します。落葉樹は広葉樹が一般的ですが、針葉樹でもカラマツのように黄葉となって落葉するものもあります。常緑樹の葉にも寿命はあり、大体1〜1.5年位ですが、クロマツの針葉は3年も永く生きています。ということは、常緑樹も落葉するということです。新葉との入れ替わりが分からないだけで、季節的には初夏に起こります。
落葉樹の葉は、気温が低くなり、同時に太陽光も衰える秋冬になると、クロロフィルの合成能力も低下して葉の緑色を保てなくなり、光合成の役割も終わります。その結果、樹にとっては不要器官となって落葉するのです。秋〜冬期は冬眠し、春ころから暖かくなり、太陽光も段々と強くなると、新葉が成長して光合成を始めます。他方常緑樹の場合は葉の表面がワックスなどで保護されていたりして低温などのストレスから守られるような構造をしています。したがって、細々ながら光合成機能は維持され、水分ロスも抑えられますので、葉は枯死しないで済むことになります。
ところで、常緑樹(灌木も含めて)というと葉が常に緑色をしているという植物と捉えられがちですが、正しくは常緑樹は一年中葉をつけている植物と理解した方がよいでしょう。
常緑樹の葉も様々な環境要因がストレスとなって紅葉/黄葉になることもあります。この色変わりのメカニズムは落葉植物の紅葉/黄葉過程と同じで、やはりクロロフィルの合成能が低下し、代わりにアントシアニンの合成が始まったり、顕れていなかったカロチノイドの色が目立つようになったりする結果です。ストレスが一時的であればまた元の緑色に戻ります。気温に関係なく葉色の変化が樹全体に起きるようであれば、病気や栄養、水分供給のバランスの異常が考えられるようです。また、モッコクのように新葉(若葉)が赤い場合もあります。
なお、上記回答に関連して、本質問コーナー登録番号1911の回答を是非読んでください。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2022-02-07
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