一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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品種(forma)の定義について

質問者:   高校生   Km
登録番号5311   登録日:2021-12-28
品種の定義について、一つや二つ形質が違うものと見ましたが、これは顕性・潜性とは全く異なるものなのでしょうか。
Km君

植物の下位分類の説明については登録番号5064, 5302をお読みください。その上で、「品種」のことだけをもう少し詳しく説明します。
「品種」は植物学上の分類の記載では「forma(form)」で、「f.」と省略するか、「forma」と省略なしで記載します。いずれもイタリックでは書きません。分類上の階級は亜種(subspecies)、変種(variety)の次(下位)に置かれます。従ってある品種の学名は属、種、亜種、変種、品種の順に記載されます。亜種も変種もない時は属、種、品種です。例えば、Acanthocalycium spiniflorum f. (forma) klimpelianum (Weidlich & Werderm.) Donald(アルゼンチン産のサボテンの一種:アカントカリキラム);Cerasus itosakura (Siebold) Masam. et S.Suzuki var. itosakura f. ascendens (Makino) H.Ohba et H.Ikeda(エドヒガン)。
品種は遺伝学の顕性(旧優性)、潜性(旧劣性)とは直接関係ありません。自然の状態で同一地域内の生育する同じ種の仲間とは交雑可能で、理解なさっているように、それほど大きくはないが、他に比べて明確に区別できる違いがある植物を指します。普通は赤い花なのに白い花の咲くのがあって、それが上記の基準に合えば、f. alba と記載されます。植物学者の中には、ちょっとした遺伝子の変異で理論的には無数の品種がありうるわけだから、わざわざformaを設ける意味はないと考える人もいます。
なお、「品種」という言葉は日常では植物分類上の階級として捉えられているよりは、栽培品種のことを指すことが多いようです。作物や園芸植物のように人為的に作出された植物は別物です。栽培品種の名前は国際栽培植物命名規約に従ってつけられます。種小名の次に栽培植物の名前(ラテン語は使わない)を'名前'のようにアポストロフィーで囲います。イタリックにもしません。例えば、Coffea arabica 'Blue Mountain' 。ただし、学名ではありません。
因みに、動物では昆虫の場合などformaを使う事があるようですが、分類学上は全く意味はありません。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2022-02-25
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