一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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サボテンの花びらって何枚ですか

質問者:   小学生   植物大好き小学生
登録番号5313   登録日:2022-01-03
アブラナ科は4枚とか、
バラ科やキク科は5枚とか、
科によって花びらの枚数が決まっているって教わりましたので、
花びら何枚問題を出して楽しんでいました。
ある時サボテンは何枚って問題を出したけど、答えが分かりません。
いろいろとサボテン科を調べてみたんだけど、
どこにも書いていなくて、モヤモヤしています。
どうか、スッキリさせてください。
植物大好き小学生 さん 

この質問コーナーをご利用いただきありがとうございます。質問には植物の形づくりについて研究をされている東京大学の塚谷裕一先生と、サイエンスアドバイザーの勝見允行先生のお二人から、下記の回答文を頂戴しましたので、参考になさってください。なお、回答文に書かれているように、図鑑や書物だけでなく、なるべく現物(生きた植物)を観察するように努められることをお勧めします。また、本質問コーナーには花びらの数に関するQ&Aがいくつか掲載されておりますので、そちらの方も参考にしてください。

【塚谷先生からの回答】
質問ありがとうございます。お尋ねのように花びらの枚数は、科によって決まっているものがたくさんありますね。ですが、サボテン科は決まっていないのです。身近なサボテンというと、夏になるとウチワサボテン、冬にはクリスマスカクタスなどがたくさん花を咲かせるので、よく見てもらうと分かると思いますが、花の外側に萼なのか花びらなのかわからない小型のりんぺんがたくさん並んでいますよね。これが螺旋状に並びながら、だんだん花の内側に向かって大きくなっていって、色もはっきりして、いかにも花びららしい花びらになっていくのが見えます。種類によっては外側ほど緑色をしていることもありますが、最初から花びらと同じ色をしているものも多いと思います。こういうふうに萼なのか花びらなのかはっきりしないものをつける花はたくさんあって、例えばツバキ、ハス、スイレン、シキミなどなどたくさんあります。そういう花では、花びらの数が決まっているバラ科とかアブラナ科などと違って、花びら(や萼)が輪状に並んでいなくて、螺旋状に並ぶことが多いのですね。そして花の外側から次第に萼、萼と花びらの中間、花びら、のように姿を徐々に変えるものも多いのです。サボテン科もその一つです。なので数が決まっていないのです。

もともと花びらも萼も、葉が変形してできたものです。葉は茎の周りに螺旋状に並ぶことが多いですね(もちろんシソ科のような例外はたくさんありますが)。その螺旋状に並んだ性質を残したまま、萼や花びらになっているのが、今述べたようなタイプの花というわけです。ぜひ植物園などで、いろいろな科の花を見比べてみてください。不思議なものがたくさんあります。


【勝見先生からの回答】
植物大好き小学生さん、
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします「植物大好き」だなんて嬉しいですね。そういう人は私も大好きです。しかもただ好きというだけでなく、植物について色々と調べようとする態度は素晴らしいです。将来植物学の研究者になってくれるかな。
 さて、サボテンの花のことですが、「大好き」君は実際にサボテンの花を手に取って観察してみましたか。サボテン科の植物にはたくさん種類があり、139属、2000種以上が知られています。花は、まれにまとまって咲く種類もありますが、一つずつ独立して作られます(単生と言います)。サボテンの花もその構成要素(パーツ、部品)は基本的にほかの花と同じです。しかし、独特の作りになっています。
 まず質問の答えを最初に言ってしまいましょう。他の花では科ごとに花びら(花弁:かべんと言います)の数がきまっていて、だいたい多くて10以内ですが、サボテンのいわゆる花びらはその数が数十にもなり、しかも同一の個体でも数が異なる事があります。さらに、花びらと「がく」(普通の花では花びらの外側にある小さい葉のようなもの)とが一緒になってしまっていて区別がつきにくいのです。おしべの数もとても多いです。したがって、サボテン科の植物では花びらの数は分類の目安にはなりません。
 サボテンの花のとくちょうを簡単に説明しておきましょう。茎の先端近いところにあるとげ座(アレオール:小室という意味)という毛やとげが作られる場所で花芽ができます。くわしい解剖的な構造の説明ははぶきますが、花はつつ状に伸びて「花被筒(かひとう)」と呼ばれる構造ができます。花被というのは花びらとがくのことです。つまり、このつつは「がくのような」,「花びらのような」区別がつかないたくさんの花被でおおわれていることになります。
塚谷 裕一/勝見 允行(東京大学大学院理学系研究科/JSPPサイエンスアドバイザー)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤公行
回答日:2022-03-09