一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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遺伝子組み換え食品について

質問者:   高校生   たまえ
登録番号5327   登録日:2022-01-25
大学の学部調べをしていて、遺伝子組み換えに興味がわき、ふと疑問に思いました。
今まで食品の表示を見ても、(遺伝子組み換えでない)と書かれたものしか、見た覚えがありません。私が意識していないせいなのかもしれませんが...。実際、日本にはどれくらい流通しているのですか?遺伝子組み換えでない、と書かれないような食品もあるのでしょうか。
たまえ 様

ご質問、有り難うございます。以下、回答致します。

遺伝子組換え作物を原材料に使用した食品の表示に関するご質問ですが、消費者庁のWebに下記のパンフレットが掲載されています。参考にしてみて下さい。
<https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/quality/genetically_modified/pdf/genetically_modified_20201009_002.pdf> 知っていますか?遺伝子組換え表示制度 (caa.go.jp)

現行の表示制度は2023年4月1日から変更になります。現行では、「遺伝子組換えでない」との表示はあくまでも任意で、表示の義務はありません。製造販売する際のイメージ戦略と、お考え下さい。遺伝子組換え作物を原材料にする際は、基本的には表示義務の対象となり、表示例としては、「ダイズ(遺伝子組換え)」とか、「大豆(遺伝子組換え不分別)」などの記載が要求されますが、あまり目にしませんね。実は抜け穴がありまして、表示義務の対象となるのは、主な原材料の重量に占める割合が5%以上であるとされています。つまり、5%未満の遺伝子組換え材料が含まれていても、「遺伝子組換えでない」と表示することが可能です。しかも、原材料の上位3番目までのものしか、対象にはなりません。従って、余程吟味した製品でない限り、遺伝子組換え作物を原材料に使用した食品を、私たちは知らされないまま口にしている可能性が高いと思われます。なお、使用が承認されている遺伝子組換え作物の短期的な安全性は、確認されています。改正後の表示は、遺伝子組換え作物と非組み換え作物を適切に分別生産流通管理されていることを明示するように求められます。

ご承知のように、ダイズ、トウモロコシ、ナタネ、コムギなど、日本での自給率は極めて低く、多くを外国からの輸入に頼っています。輸入の際、多くは船で運ばれますが、その際に、例えば遺伝子組換えダイズと非組み換えダイズを厳密に分別して運んでいるわけではない実情があります。日本を除く多くの国では、除草剤に耐性なダイズとか、殺虫成分であるBtトキシンに耐性なトウモロコシを、大量に生産していて、日本はそれらの遺伝子組換え作物を輸入していることになります。例えば2020年のダイズのデータでは、国産(すべて非組み換え)の食品用の自給率は約20%であり、味噌、しょうゆ、サラダ油、飼料などの用途を踏まえると、全体の6%に過ぎません( <https://www.maff.go.jp/j/heya/kodomo_sodan/0308/05.html> 日本人は大豆をむかしから食べているのに、なぜ自給率(じきゅうりつ)が低いのですか。:農林水産省 (maff.go.jp)。
米以外の農産物も、国内自給率を上げていくことが大切ですが、生産者が進んで生産できる優れた政策がない限り、自給率の向上は難しい状況にあると思われます。

本欄植物Q&Aの、登録番号1223もご参考にしてみて下さい。
山谷 知行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2022-02-18
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