一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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強光下での陰生植物

質問者:   高校生   リック
登録番号5335   登録日:2022-02-13
生物の資料集(ニューステージ生物図表[浜島書店])を読んでいると、陽生植物と陰生植物の比較の表がありました。
そこでさらに、陰生植物が2つに分類されていて、
「極相林の林冠構成種(陰樹)」
 性質:強光下でよく成長する
   弱光下でも生育できる
「林床植物」
 性質:強光下で生育が阻害される
とありました。
どちらも同じような弱光下で育つものの、
強光下では成長したり、成育が阻害されたりしているという違いがあります。
その原因・メカニズムは何なのでしょうか?
リック君

この質問コーナーをご利用いただきありがとうございます。
耐陰性(shade tolerance)が強くて陰地に生育できる植物を「陰生植物(shade plant)」と呼びますが、陰地条件に耐える植物の性質は環境条件への順応や成長の段階によって変わる場合があります。例えば、極相(climax)林を形成するブナやシイなどの樹木の場合、幼木は耐陰性を備えているために樹陰が作る弱光下で十分に成長しますが、成木になるに伴って耐陰性が低下すると同時に耐光性が強まり、強光にさらされる樹冠を構成する位置を占めるようになります。他方、ある種のシダやランなどの例に見られるように、直射日光をわずかに浴びると枯死するほどに光に弱く、林床の弱光の下で一生を終える陰生植物も多くあります。以上に説明した2つの場合が資料集の分類に対応します。敢えて別の表現をすると、「条件陰生植物」と「絶対陰生植物」に区別されるかと思います。

光合成を営んで生きている植物の成長には光エネルギーの注入が不可欠ですが、他方、光は生物にとって極めて有害な存在でもあります。このため、光合成生物は過剰に吸収される光エネルギーを消去・散逸させるための多重な仕組みを備えております(例えば、「光阻害」のキーワードで検索してみてください)。一般に、陰生植物は弱い光を有効に利用するための光合成の仕組みを備えていますが、他方では過剰な光エネルギーを消去するための仕組みには不備がある場合が多いように見受けられます。以上、耐陰性や耐光性と言う用語を使って説明しましたが、ご質問ではそれらの仕組みの作動メカニズムが問われているものと理解します。しかし、一度に説明すると複雑になり過ぎますので、今回はここまでの整理で回答とさせていただきます。更に興味を持たれるようでしたら、幾分焦点を絞られ(幾分学習され)、改めて本コーナーをお訪ねください。
佐藤 公行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2022-03-20
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