一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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光合成により吸収するCO2の量と呼吸により吐き出すCO2の量について

質問者:   その他   Mash
登録番号5337   登録日:2022-02-17
近年の地球温暖化に対し、GHG削減のため、各企業がいろいろな取り組みを行っている中、日本のエネルギー問題は、世界に頼っていることでなかなか難しい問題であると思っております。
少し前より、「バイオガソリン」や「木質バイオマス発電」など注目されており、燃焼時にCO2を発生しても、植物が成長する過程で光合成によって大気中のCO2を吸収しているので、地球温暖化防止に役立つと言われております。
そこでご質問になりますが、そもそも、大小で表すと、「光合成により吸収するCO2の量」 > 「呼吸により吐き出すCO2の量」となっているのでしょうか。
植物は、1日中、呼吸をし、また光合成は、光があるときのみのように思われます。

ご回答の程、よろしくお願いいたします。
Mash 様

ご質問、有り難うございます。
光合成をご専門とされています東北大学名誉教授の牧野周先生に、本件の回答をお願い致しました。
なお、下記の回答にもありますように、光合成により吸収するCO2速度は呼吸で排出するCO2速度よりも遙かに上回っていますが、そもそも呼吸の出発点は植物が光合成によって合成された糖類に依存しています。動物や寄生植物とは異なり、一般の植物は有機物を光合成で生合成していますので、呼吸も光合成産物由来と考えることができ、真のCO2排出には関与していないと言うことができます。

【牧野先生の回答】
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第4次評価報告書によると、陸上植物の光合成による年間の吸収固定炭素は120 Gt(ギガトン)強で、陸上植物の呼吸による年間炭素排出は60Gt余りと推定されています。したがって、正味年間60Gt余りの炭素が植物によって吸収されていることになります。一方で、陸上の人類を含む動物や微生物などの従属生物(光合成を行わない生物)の呼吸による年間炭素排出も60Gt余りと推定されていて、陸上の生物相全体での炭素収支は1から2Gt吸収の方向にあるとされています。また、海洋の炭素収支も2Gtほど吸収の方向にあります。これは、現在の大気のCO2濃度が地球全体の炭素収支の平衡バランスより高いことによります。そして、その大気のCO2濃度を高めているのが、人類の活動に伴うCO2放出で、その量はおおよそ年間8Gtほどと見積もられています。

なお、因みに草本植物の葉が日中盛んに光合成を行っている時の光合成速度:呼吸速度比は10:1から20:1です。
牧野 周(東北大学名誉教授)
JSPPサイエンスアドバイザー
山谷 知行
回答日:2022-03-11
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