一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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エケベリア属の葉挿し

質問者:   大学生   秋王
登録番号5339   登録日:2022-02-23
多肉植物(エケベリア属)の葉挿しに関する質問です。
エケベリア属の葉挿しでは、葉を茎から綺麗に取り外した場合、葉の根元から根と芽が出て新しい個体を得ることができます。しかし、葉の根元がちぎれるなど上手く取り外せなかった場合にはほとんど成功しません。
これはなぜなのでしょうか?
腋芽となる細胞が葉の根元に付着しているというのは考えづらいので、別の要因があるのではないかと考えています。
ご回答のほどよろしくお願い致します。
秋王樣

Q&Aコーナーへようこそ。歓迎致します。植物体では芽は茎頂分裂組織の活動で分化しますが、茎の切片や分離した葉などの器官から形成される芽は不定芽、根は不定根と言います。不定芽、不定根の形成には植物ホルモンのサイトカイニンとオーキシンがそれぞれ必要です。これ等の事はすでにご存知かと思いますので詳しい説明は省略いたしますが、本コーナーでも関連する質問がいくつもありますので、不定芽、不定根、揷し木、葉さし等のキーワードで検索して参考にして下さい。
 不定芽や不定根が形成される為にはまず分裂組織の存在が必要です。葉の分裂組織は葉の基部にあります。これは茎頂分裂組織の様な組織とは異なって介在分裂組織と呼ばれ、伴細胞を含む師部の柔組織です。同じ柔組織でも海綿状組織のような葉肉組織からは不定芽などは形成されません。この介在分裂組織は、葉が茎とつながっている時には、細胞分裂によって作られる新しい細胞は葉自身の成長に使われます。しかし、一旦茎から離れると不定芽のような器官となる別のタイプの細胞を作ることができると考えられますが、その機構の詳しい解析はまだなされていないようです。
 一般に、切り離した葉における不定芽や不定根の形成は特別な処置がない限り容易ではありません。不定根の方は比較的形成されやすいようですが。他方、多肉植物や半多肉植物は例外で、種類によって程度の差はありますが、切り離した葉を培地に挿しておけばかなり簡単に不定芽を誘導できます。
 さて、ご質問のEcheveria属の事ですが、葉を切り離す時雑に扱うとほとんど芽が出ないということは、おそらく葉の基部にある介在分裂組織が切り離した葉に含まれていないのではないかと想像します。ちなみに形成される不定芽は腋芽ではありません。切り離した葉が基部から不定芽(新しい茎頂分裂組織)を形成(分化)出来る能力はどれだけ高い密度で師部組織が残存しているかで決まると考えられます。
 切除葉から不定芽や不定根が形成されて成長する為には、前述の植物ホルモンの関与が必須ですし、水分や栄養分の補給も必要でしょう。不定芽や不定根を分化出来るもっとも適した多肉植物の切除葉は柔組織が多くて、含水量が十分あること、葉の表面積/容積比が小さいことなどが言われています。
次の論文は参考になるでしょう。

Root Gorelick: Why vegetative propagation of leaf cuttings is possible in succulent and semi-succulent plants. 2015 Haseltoia 20:51-57
web上からダウンロードできます。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2022-03-30
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