一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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花の形が昨年までと違う。突然変異?来年はどうなる?

質問者:   一般   suzu
登録番号5355   登録日:2022-04-06
テラスで桜を1本育てています。今年で樹齢7~8年くらいです。アメリカンチェリーのような実がなります。
昨年までは普通に一重の花に1本の雌しべでした。数日前に今年も開花したのですが、今年はなぜか突然それぞれの花に2つの雌しべ、雄しべの何本かは花弁になっています。

「何かの病気かな」と心配になって色々と調べていましたが、他の質問者さんからの類似の質問で「ホメオティック突然変異」という言葉を目にしました。おそらくウチの桜もそれかな?と。

こうなってしまった原因もものすごく気になりますが、それよりも私は来年以降はどうなるのかが気がかりです。このまま八重桜に変異していくのか、また元に戻ってくれるのか…。
ご存知でしたら教えていただけると嬉しいです。よろしくお願い致します。

Suzuさん

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
ご質問は長年サクラの研究を続けておられる森林総合研究所の勝木俊雄博士にお願いいたしました。花の形成は茎頂細胞群で多くの遺伝子が統合的に働いて完成するものです。基本的には萼、花弁、雄しべ、雌しべの順に円心状につくられていきますが、本来は葉になるべき原基が遺伝子の働きで各花器官に変形したものと考えられています。遺伝子の働きは細胞周辺の微少な環境変化にも敏感に変動しますので花弁の数、雄しべの数、雌しべの数などが一時的に変化することは珍しくありません。このことを前提に勝木博士の回答をお読みください。 今、新着のQ&A登録番号5356の塚谷博士による回答は関連するものです。ご参考になさって下さい。 


【勝木博士の回答】
ご質問のサクラは、写真からだとセイヨウミザクラのように見えますが、サクラ全般と考えて回答させていただきます。
雌しべの数の増加や、雄しべの花弁化といった現象は、サクラ類に比較的よく見られます。こうした現象がほとんど生じない個体や、必ず生じる個体が見られることから、遺伝的な要因が関わっていることが示唆されます。しかし、同じ個体であっても、年によって良く生じる年と、ほとんど生じない年があることも観察されます。したがって、生育環境も要因として大きく関わっていると考えられています。実際には遺伝および生育環境がどちらも影響していると考えるべきでしょう。

ご質問のサクラの個体について、これらの要因がどのように影響しているのか、写真で判断することは困難ですが、特定の枝だけに生じているわけでは無さそうです。枝変わりのような遺伝的な突然変異であれば、一部の枝だけに変異が生じます。したがって、生育環境が原因ではないかと思われます。だとすると、年によって変わるものですので、今年の環境が平年並みでしたら来春は元に戻るのではないでしょうか。


勝木 俊雄(国立研究開発法人森林総合研究所)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2022-04-11