一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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ニンニクに含まれるポリフェノールについて

質問者:   自営業   バラ窓
登録番号5369   登録日:2022-04-29
何回か、投稿をさせて頂いています。貴重なお話をお聞きできて、大変勉強になります。
今回、ニンニクに含まれるポリフェノールの名称について、御聞きしたく投稿しました。
玉ねぎだとケルセチン、ミカンだとヘスペリジン、大豆だとイソフラボン、ブリールベリーや赤ブドウ、黒ぶどうだとアントシアニンと言った様に、様々なポリフェノールが存在するようですね。
ニンニクのはなしにもどしますが、ニンニクを発酵させると、生の状態より、ポリフェノールの量がかなり増えると聞きます。
ニンニクに含まれるポリフェノールの名称を教えて下さい。
バラ窓様

ニンニクに含まれるポリフェノールは種類があまりにも多いので、どれか1つの化合物名をお答するのは、不可能と言っていいでしょう。
説明:
ベンゼン(分子式:C6H6)は6角形の炭素骨格をしていますが(ベンゼン核という)、そこに結合しているH原子の1つが水酸基(OH基)で置換された化合物(C6H5OH)をフェノール(石炭酸)と言います。(詳しくは、本「みんなのひろば」―「植物Q&A」で、「ポリフェノール」を検索語とし、登録番号2230, 2105の回答を参考にしてください)。水酸基2個を結合したものはジフェノール、3個結合したものはトリフェノールと呼びます。水酸基が2個以上結合したものはまとめてポリフェノールとよびます。ベンゼン核に結合したH原子は反応性が高く、他の炭素原子などとも結合して、非常に多種類の化合物が生じます。そこで、「ポリフェノール」の用語を拡張し、その化合物の部分構造がベンゼン核にOH基を結合している場合は、炭素原子などが置換しているものまで含めて「ポリフェノール(類)」と言います(より正確には、フェノール性化合物というのが適当でしょうが)。ポリフェノール類に属する化合物は、ざっと、1つの植物個体でも数10種程度はあるだろうといってよいでしょう。
 ニンニクは洋の東西を問わず、古くから食用とされており、一部の人からは、その人体に対する効用として、疲労回復、免疫力アップ、美肌作用、アイチエイジング、風邪予防、がん予防、冷え性改善などがあげられている例もあります。こうした薬効のある化合物としては、ニンニクに含まれる硫黄化合物(アリリンなど)やポリフェノール類が想定されています。中国の研究者グループが、非常に多くのニンニクの品種について、そのポリフェノール含量を調べた研究がありますが「ポリフェノール」の種類があまりにも多く、個々の化合物に分けて定量するのは不可能と言ってもいいため、生化学実験でフェノール性化合物の比色定量によく使われる「フェノール試薬(フォリン試薬:Folin-Ciocalteu試薬)」を用いて、ざくっと「フェノール性化合物」の定量をしています。
 ご質問の、ニンニクに含まれるポリフェノールは、化合物の種類が多く、ニンニクの栽培品種によっても各化合物の含量が大きく異なるため、ご質問のお答として、特定の化合物を挙げるのは、適当ではないと考えます。
櫻井 英博 (JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2022-05-12