一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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2種類の実

質問者:   会社員   クサナギ
登録番号5372   登録日:2022-05-05
庭の桜に2種類の種(実)がついています。
どうしてですか。
教えて下さい。
一つは、いつもついている丸い小さな種、
もう一個は、さやえんどうか藤の種のような形です。
クサナギ様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。たいへん長いこと回答をお待たせしてすみませんでした。回答にもあるようにこの質問は果樹の病理の問題ですので、本学会が対応できる分野ではありません。そこで、この様な問題を研究なさっておられる適当な研究者の方を探して依頼することで、時間を取られてしまいました。久保山京子先生のご協力で、森林総合研究所 多摩森林科学園の長谷川絵里先生に説明をいただきましたので、それに基づき回答いたします。

まず、ご質問の対象となっている写真の植物はサクラではなく、ユスラウメだと思われます
近年の分子(DNA)系統解析によれば、分類上ユスラウメが属するニワウメ(Microcerasus)属は、サクラの仲間よりはスモモの仲間に近いと言われています。
写真の長く変形したユスラウメの実は Taphrina pruni という病原菌の感染による「ふくろ実病」にかかった実だと思われます。
ユスラウメふくろ実病の病原菌は、スモモふくろ実病の病原菌と共通です。ふくろ実病はミヤマザクラやシウリザクラでもありますが、これらの病原菌はそれぞれ別種のふくろ実病病原菌 となります。
したがって、写真に見られるエンドウの莢のような長い実は菌類の感染によって生じた異形の果実です。ユスラウメふくろ実病には現在認可された農薬がありませんので、被害の拡大を防ぐためには罹病果実をその場に捥ぎ落としたりするのではなく、確実に除去する必要があるということです。
ユスラウメふくろ病に関連する研究論文や研究書をいくつか紹介していただきましたが、専門的すぎるかもしれませんので、もしかしたらどこかの図書館でみられるかもしれない参考書をあげておきます。
岸國平(編)(1998a) 日本植物病害大事典. 全国農村教育協会, 東京, 991.
岸國平(編)(1998b) 日本植物病害大事典. 全国農村教育協会, 東京, 999.
又、WEB 上で「ふくろ実病」で検索していただければ、一般向けの解説や写真がたくさんありますので、参考になるでしょう。

勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2022-05-28