一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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アミノ酸合成におけるアミノ基転移について

質問者:   教員   べーさん
登録番号5394   登録日:2022-06-20
高等学校の授業で使用している資料集があります。窒素同化の授業をしたあとに、生徒から質問を受けました。自分なりに答えを考えてみたのですが、正しいかどうかがわかりません。

生徒の質問は、「アミノ酸の合成」でアンモニウムイオンからアミノ基を転移し、各種アミノ酸をつくるまでの過程の図の下にアミノ基の流れ(-NH2+)の(-NH2)の右上についた+は何か、というものでした。
アミノ酸のpHによる変化で、アミノ基がプラスになるとは思いますが、その場合は(-NH3+)と表記されるのではないでしょうか。資料集が間違っているのか、それとも違う意味の(-NH2+)表記なのか、教えていただきたいです。

よろしくお願いいたします。
べーさん 様

ご質問、有り難うございました。
アミノ酸は、ご承知のようにα位のCにアミノ基(-NH2)とカルボキシル基(-COOH)を持ちますが、中性付近では1分子内に正電荷と負電荷の両方を持つ、いわゆる双性イオンを作ります。その際は、アミノ基は-NH3+となり、カルボキシル基は-COO- となります。双性イオンは、電気的に中性な状態です。ご質問への回答ですが、資料集の-NH2+の表記は間違いだと思われます。酸性溶液中では-NH3++と-COOHの組み合わせで分子としては陽イオン、塩基性溶液中では-NH2と-COO-の組み合わせで、分子としては陰イオンとなります。植物の窒素同化で生成するアミノ酸はグルタミンであり、このグルタミンが直ちにグルタミン酸に変換され、多くのアミノ基転移反応の基質に使われます。グルタミン酸の他にも、セリンやアラニンなどもアミノ基の供与体として使われます。
余談ですが、最近、ハヤブサ2が小惑星イトカワから持ち帰った資料中に複数のアミノ酸が含まれていることが報道されました。生命の起源を考える上で、大変夢のある成果だと思います。地球上の多くの生物ではL-アミノ酸が用いられていますが、バクテリアなどではD型も使われることがありますが、イトカワのアミノ酸がどちらのタイプなのかも楽しみです。D型であっても、ラセマーゼという酵素があれば、L型に変換できますので、アミノ酸が検出できたことが大発見です。
山谷 知行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2022-06-22