一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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オオカナダモとBTB溶液の反応について

質問者:   大学生   理科は面白い
登録番号5401   登録日:2022-06-29
背景
中学校の教育実習で、教材研究をしていて疑問がわいたため。結局解決できず、教科書通り教えましたが、もやもやが残ったままなので質問させていただきました。

青色のBTB溶液に息を吹き込み、黄色にした状態で、オオカナダモをいれ、BTB溶液の色の変化がオオカナダモによる光合成の影響かどうかを確かめる実験があります。

教科書にはオオカナダモが二酸化炭素を吸うことによって黄色から青色に戻ると書かれていますが、これがなぜなのか分かりません。戻るのは緑までではないでしょうか?

BTB溶液の色の変化は周りのPHの変化に応じて水素イオンがBTB分子から脱離しているか、していないかで変わると認識しています。初期の青色は水酸化物イオンによってアルカリ性にしているので平衡も傾くので、納得できますが、一度呼気によってBTB溶液が酸性になった場合、溶液中の水酸化物イオンは二酸化炭素が溶けてイオン化した際にでた水素イオンとの中和反応によって消費されるので、いくら光合成で二酸化炭素を吸っても水酸化物イオンは増えず溶液はアルカリ性には戻らない、つまり戻っても緑色までではないのでしょうか?(水の電離以外に水酸化物イオンを生み出す反応はないはず?)

オオカナダモは気孔がなく、根から吸った炭酸イオンを光合成に使用する?など見ましたが、光合成では必ず二酸化炭素を使用するとあったので、炭酸イオンを二酸化炭素に変えるまでに、なにか大学レベルの難しい反応が隠れているのでしょうか?

よろしくお願いいたします。
理科は面白い 様 

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。まず、基本的なことを確認しておきましょう。
1 BTB試薬は溶液(液体)のpHを呈色によって大まかに調べるときに使います。青色:アルカリ性、緑色:中性、黄色:酸性ですが、中性付近のpHでは多少曖昧になります。
2 BTB溶液が青いのはアルカリ性に調整されています。
3 気体の酸素や二酸化炭素は液体の中にそのまま溶けていても、pHには関係しません。
4 二酸化炭素は水の中ではごく一部は分子状体を保ちますが、大部分はは水分子と反応して重炭酸イオンや炭酸イオンとなって平行状態を保ちます。
        CO2+H2O ⇔ H2CO3 ⇔ HCO3-+H+ ⇔CO32-+2H+
5 葉緑体の中ではHCO3-はカルボニックアントヒドラ-ゼ(重炭酸脱水素酵素)によってH2CO3⇨CO2ができます。
6 CO2はCO2固定酵素(リブロース1,5ービスリン酸カルボキシラーゼ:Rubisco)で炭酸固定される。
 
さて、実験では青色の(アルカリ性)のBTB溶液に息を吹き込んでBTB溶液が黄色に変わるということは、呼気の中の二酸化炭素がたくさんBTB溶液に溶けて、上記反応式の様にプロトン(H+)が増加して、溶液は酸性に転移して黄色を呈したわけです。ここにオオカナダモを入れて光合成をさせると、BTB溶液中の重炭酸イオンが5、6の様に消費されてなくなると、BTBは元のアルカリ性の状態に戻ります。溶存二酸化炭素がだんだん減少してくると酸性度は低くなり、中性(緑色)を経て最後は青色になります。もっともアルカリ性に近いpHでは緑ぽい青色を呈することもあるでしょう。
なお、本コーナーの関連する質問/回答を参考にしてみてください。(登録番号2306
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2022-07-01
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