一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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暑い日の夕方の水やり

質問者:   会社員   えなねこ
登録番号5404   登録日:2022-07-05
植物を大小の鉢で育てています。水やりは乾いてから、といわれているため、毎朝土をチェックして水やりします。一方で、真夏は夕方にも水やりするように、とも言われるため、夕方水やりすると、朝には乾いていないことが多いです。そこで朝、水をやらないと、昼にはカラカラになってしまうため、朝水やりしますが、根は乾いているときに伸びる、と聞きます。朝夕と水やりしていると、根が乾く間がなく、根腐れも心配です。どのように考えて夕方の水やりをしたらよいでしょうか。
えなねこ さん

この質問コーナーをご利用いただきありがとうございます。

園芸植物の世話をする人の世界では「水やり三年」と言われていると聞きいたことがあります。園芸植物の種類は多く、また、生育させる環境もポット栽培などのように植物にとってはかなり過酷な場合も含まれて多様ですので、数多い園芸植物への水やりを適切なタイミングで行うことについて学習するには相当の修行(試行錯誤)が必要であると言う意味だと理解します。

水は、植物体を構成する第一の要素で、生命現象を支える化学反応の溶媒として働くととともに反応にも直接に関与し、また、二酸化炭素からの有機物合成に不可欠な電子の供給源として機能しています。このため、水の供給は生育のために絶対に欠かすことはできず、水不足は植物にとって致命的です。一方、根系に過剰の水が供給された場合に生ずる重大事の一つは根における呼吸の阻害です。土壌への水の供給が過剰になると根からの酸素吸収が抑えられて呼吸不全になり、生育に障害が生じ根腐れなどの病気の原因になることがあります。「根は乾いているときに伸びる」とありますが、根は一般的には水を求めて伸びる性質を備えているので、一面を言い当てているのかも知れません。しかし、他方で乾燥は生育を阻害する要因となるので、そこは程度の問題だと思います。ビデオイメージングなどの手法で根の生長を連続観察すると、多くの場合(概日リズムのような)リズムが認められるようで、当然、そこには物質のリズミカルな集積と水の吸収が関係していることになります。このことから考えると、水やりにはこのリズムに合った適切なタイミングがあるのかも知れません。

イネやハスなどのように水中で根を発達させて生きる植物もあるので、植物の種類に大きく依存する話ではあると思いますが、一般論としては、通気性が良く、常時ある程度の湿り気がある土壌の状態が保たれているのが良いのではないでしょうか。

なお、この質問に関連して、日中に水を与えない方が良いかどうかについての議論が登録番号2735にありますのでご参照ください。また、根における呼吸に関しては例えば登録番号1130を参照してください。
佐藤 公行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2022-07-07