一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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菊のDNAは抽出できるか

質問者:   小学生   R
登録番号5418   登録日:2022-07-27
よくブロッコリーでDNAを取り出しをする代表的な簡易な方法で、
菊の花びらと、菊の蕾をそれぞれすり鉢で潰して
無水エタノールと、食塩と中性洗剤でDNAが浮き出せるのかをやってみました。
しかし、どちらも試料とエタノールの層に分かれますが、DNAが浮き出てくることはありません。
①そもそも、このような方法では花のDNAは取り出せないものでしょうか?
②キャベツは取り出し出来ました。できるもの、できないものがあれば見分け方を教えてください。
よろしくお願いいたします。
R様
 
こんにちは。日本植物生理学会の植物Q&Aコーナーに寄せられたあなたのご質問「菊のDNAは抽出できるか」にお答えします。

DNAを抽出するには学校で指導されたりネット上で紹介されたりしている簡単な方法があり、原理的にはそのような方法でどんな植物材料からでも、つまりキクからでも、花からでもDNAを取出すことができます。うまく取出せなかったのならば、実験方法を間違えたか、材料の扱い方が適当でなかったからでしょう。
キャベツからは取出せたとのことですので、実際にやられた実験方法は正しかったと思います。ですから、キクの花弁や蕾から取出せなかったのは、すり潰しに使った量が少なかったか、これらを材料とするときには何か特別な工夫が必要だったからでしょう。
DNAは核の中にあり、1個の核は1個の細胞の中にありますから、小さい細胞の集まった材料は相対的に多くの細胞、多くのDNAを含むので、すり潰す量が少なくてもDNAを取出しやすいです。実験材料としてよく紹介される食用のブロッコリは盛んに細胞分裂をしている若い蕾なので細胞が小さくDNAを取り出しやすいのです。それに対して花弁や果実の細胞は大きいのが普通なので、相対的にDNA 含量が少なく、たくさんの材料をすり潰さないと取出せません。キクの花弁から取出せなかったのは使った量が少なかったからかもしれません。
一方、キクの蕾はまだ細胞が小さく、相対的なDNA 含量は多いと思われますが、これからも取出せなかったのは花弁の場合とは違う原因があるのかもしれません。DNAを取出すにあたって、すり潰すのは細胞壁を壊すため、中性洗剤を使うのは脂質を含む細胞膜や核膜を壊すため、食塩を使うのはDNAに結合しているタンパク質を分離するためですから、硬かったり、脂質やタンパク質の含量が多い材料ではすり潰し方、中性洗剤や食塩の濃度を工夫する必要があります。キクの蕾がどのような性質のものかわかりませんが、これらについていろいろ試してみるとよいでしょう。
以上のことから、DNAの取出しが出来るもの、出来ないもの(というより、取出しが簡単なもの、難しいもの)の見分け方もわかったと思います。

ところで、エタノール層にDNAが浮き出てくればそれで実験成功!と考えていませんか?でも、その白いもやもやしたものは本当にDNAなのでしょうか?それを確認するにはどうすればよいかということを考えるのも大事なことです。
竹能 清俊(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2022-08-01
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