一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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ナスの外果皮はどうなっているのですか

質問者:   小学生   モルモット
登録番号5419   登録日:2022-07-27
夏休みの自由研究にナスの色移りについて調べています。外果皮のどこにアントシアニンがふくまれていますか。
モルモット さん

みんなのひろば 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
ご質問の「色移り」の意味がはっきりしないので、おそらく「色が衣服などについてしまうこと」ではないかと想像しました。その上でご質問にお答えします。
ナスの果実(植物学的には野菜のナスやトマトは果実といいますが、果物と混同するので、ふつう果菜と呼んでいます。野菜、蔬菜とは草の仲間に使い、果物は樹木になる水分の多い果実をさします)を縦でも横でもいいですから切って切り口を見て下さい。濃い紫色の部分は外側にうすくあるだけですね。これが外果皮ですが、一番外側にふつう一層の細胞層があり、表皮となっています。表皮は内側からの水分蒸発を制限するなど保護的な働きがあり、アントシアニンは含まれていません。表皮の下に数層の細胞層があり、これが外果皮です。さらにその内側には着色していないうす黄色のスポンジ状の部分(内果皮)があり、さらに内側にやはりスポンジ状ですが種子がついている部分があります(胎座といいますがナスでは余りはっきり区別出来ませんね)。アントシアニンは外果皮の細胞の中にある液胞という袋の中に貯められています。ですから、ナスにナイフで傷をつけると外果皮の細胞が壊れ、さらに液胞も壊れて着色した液がしみ出てきます。この着色液が「色移り」の直接の原因です。もう少し詳しくいうと、液胞の中に一様に溶けているだけでなく、アントシアニンが集まっていて特に色の濃い部分があります。ときには結晶状になっている場合もあります。そのため、かなり濃い紫色、黒紫色に見えますが、品種によって色調が微妙に違い、中には色素のない(少ない)ものもあります(白ナス)。品種による色調の違いは主にアントシアニンの化学構造の違いによります。
もしも、「色移り」が別の意味でしたら、意味をもう少しはっきりさせて、またこのコーナーに再質問して下さい。
今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2022-07-28