一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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樹木の葉内のリン濃度と土壌の関係

質問者:   その他   とまと
登録番号0542   登録日:2006-02-27
土壌のpHによって、樹木内のリンの濃度が変わるという話を聞いたのですが、どうゆうメカニズムですか?
また、リンは樹木にとってどんな役割を果たしているのですか?
とまと様

 みんなの広場へのご質問有難うございました。寄せられたご質問にたいする回答を東京大学農学部の西沢直子教授にお願いいたしましたところ、以下のような丁寧なご回答をいただきました。お役に立つと思いますので、しっかり読んで下さい。


土壌の種類によって植物根に吸収されやすい可溶性リン酸の量は異なります。一般に土壌中の可溶性リンは非常に少ない(0.001-0.01 ppmP)ことが知られています。日本の酸性火山灰土壌はフィチン態のリンが多く、またpHが低いためにリンが粘土のアルミニウムと結合して不溶体になっているので、植物が吸収できずに、非常に作物収量が低い土地でした。そこで、石灰(CaCO3)で土壌のpHを中和したり、過リン酸石灰でリンを施肥したりして、土壌中の可溶性リン酸の量を増やすことによって、現在ではむしろ豊かな土壌になっています。ところが、このような作物にとって元来は不毛の土壌である火山の周辺でも、天然の松、カバノキ、ツツジ、ブナ、ランなどの樹木が豊かに生えています。それは、これらの樹木の根には菌根菌(ミコリザ)が共生しており、その菌糸の表面積が広いために、そこから吸収したリンを宿主に送っているためです。
 窒素(N)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)などと同様にリン(P)は樹木の体の中に無くてはならない元素です(必須元素といいます)。リンは樹木の体の中で、DNA、RNA、糖リン酸、リン脂質、ATPなどの各種の重要な化合物にダイナミックに変化しています。その過程で、光合成のエネルギーの受け渡しをやったり、情報伝達をしたりして、細胞の分裂、増殖、伸張に深く関わり、樹木が体力を恒常的に維持し、成長することに役立っています。

 西澤 直子(東京大学農学部)
JSPPサイエンスアドバイザー
 柴岡 弘郎
回答日:2006-03-01
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